7月10日の職員の定期異動も終了し2ヵ月経つが、新型コロナ感染症の影響等で遅れがちとなっていた法人に対する調査が再開されている。ところで、「12月決算法人や1月決算法人は一番調査の機会が少ない」という“都市伝説”があることはご存知だろうか。不公平だと憤る向きもおられようが、その要因は、国税当局の事業年度からくる調査のサイクルや税務職員の勤務評価の対象期間などにあるというのだ。

国税当局の事業年度は7月から翌年の6月である。1年決算の法人は年1回申告書を提出するが、これに対して国税当局は一事業年度内に必ずその申告内容を認めるか調査するかを決めることになっている。一方、法人は決算期終了後、原則2ヵ月以内に申告書を国税当局に提出しなければならない。提出された申告書は数ヵ月後に当局で内容を精査されるから、仮に調査となればさらに数ヵ月後先となる。

このような調査までのサイクルからみると、国税当局の新事業年度が始まる7月の国税職員の定期異動後に申告書を処理するのは2月決算法人からとなる。申告書の内容が精査されて、疑問があれば調査対象となり、疑問がなければ調査省略となって処理が終わる。こうしてみると、サイクルの後のほうなる12月決算法人や1月決算法人に対しては、内部での申告書の精査や調査の時間的な余裕がどうしても少なくなる。

一方で、税務職員の勤務評価の対象期間が微妙に絡んでくる。一般職員の勤務評定は4月初旬に行われる。このことから、勤務評価に反映するのは異動後の7月から12月の実績が主になり、少なくとも3月までの実績で評価される。勤務評定が終わった4月から6月の実績は評価に反映されにくい。すると、事業年度の後半の処理にならざるを得ない12月・1月決算法人に対する熱意も低いことは想像できる。

もっとも、申告内容がひどいものであれば、事業年度をまたいで処理を延長することも十分に考えられる。特に部門の統括官が異動しない場合は、処理を延長することも少なくないという。ともあれ、12月・1月決算法人は調査機会が少ないということは可能性が高いと言えなくもないようだ。とはいえ、決算期を変更しても、その結果についてはもちろん責任は負いかねるので、念のために―。

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