中小企業者等の法人税率の特例については、2019年度の税制改正における適用期限の延長に伴い、中小企業者のうち適用除外事業者に該当するものは、その該当する事業年度においては適用を停止することとされた。この適用除外事業者とは、基準年度の所得の金額の年平均額が15億円を超える法人をいうこととされている。この件に関し、国税庁は「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)を公表して趣旨を説明している。

それによると、この適用除外事業者の判定に当たっては、この年平均額は、基本的には、各基準年度の確定申告書に記載された所得の金額により計算することとなるのだが、確定申告により一旦確定した所得の金額が修正申告や更正により変更された場合には、その変更後の所得の金額をもってその年平均額を再計算することとなるのか、当初の確定申告書に記載された所得の金額から計算した年平均額でよいのか疑問が生ずる。

この点、所得の金額に変更があった場合に当初の確定申告書記載の所得金額により計算した年平均額とする特段の規定はないので、各基準年度の所得金額が変更された場合には、この年平均額はその変更後の正当額により計算することとなる。その結果として、それ以前の判定で適用除外事業者に該当しなかった法人が改めて適用除外事業者に該当することとなれば、遡って中小企業向け租税特別措置の適用を受けることはできないこととなる。

また、この適用除外事業者の判定に当たっては、過去3年以内に合併等が行われたこと等の一定の事由がある場合には、調整計算を行うこととされている。このため、例えば、基準年度における被合併法人の所得の金額につき修正申告や更正により変更されることもあり得るが、その場合には、その変更後の各事業年度の所得の金額をもってその年平均額を計算することを改正通達の注書において明らかにしていると説明している。

なお、適用除外事業者の判定に関しては、判定対象年度に繰戻還付制度の適用があった場合には、その判定対象年度に生ずる欠損金額のうちその適用を受ける欠損金額を各基準年度の所得の金額の合計額から控除することとされている。このとき問題となるのは、判定対象年度で繰戻還付制度の適用を受けたとしたならば、その年平均額が15億円以下となって判定対象年度で適用除外事業者に該当しなくなる状況下に置かれるケースである。

このような状況においては、繰戻還付制度の適用を受けることを前提として、例えば中小企業向け特別償却制度などの租税特別措置の適用を受けてよいものか疑問が生ずる向きもある。この点、当該法人は判定対象年度に繰戻還付制度の適用を受けることで、適用除外事業者に該当しないこととなるから、繰戻還付制度の適用を受けることを前提として、中小企業向け租税特別措置を適用しても問題ないとの考えを示している。

この件については↓
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/200708/pdf/04-1.pdf

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