納税者が国税当局の処分に不満がある場合は、税務署等に対する再調査の請求や国税不服審判所に対する審査請求という行政上の救済制度と、訴訟を起こして裁判所に処分の是正を求める司法上の制度がある。国税庁・国税不服審判所が19日に公表した再調査の請求や審査請求、訴訟の概要によると、今年3月までの1年間(2019年度)の再調査の請求・審査請求・税務訴訟を通しての納税者救済・勝訴割合は12.7%となった。

再調査の請求の発生件数は、徴収関係を除く申告所得税等(▲26.6%の547件)全ての税目が減少し、全体では前年度から▲33.5%の1359件となった。処理件数は、「取下げ等」187件、「却下」125件、「棄却」1014件、「一部取消」141件、「全部取消」46件の合計1513件(前年度比▲29.6%)。納税者の主張が一部でも認められたのは計187件となり、処理件数全体に占める割合(救済割合)は前年度(12.3%)からほぼ横ばいの12.4%だった。

また、国税不服審判所への審査請求の発生件数は、申告所得税等(▲25.6%の772件)や消費税等(▲13.7%の961件)などほぼ全ての税目が減少したことから、全体では前年度から▲17.6%の2559件。処理件数は、「取下げ」348件、「却下」134件、「棄却」1989件、「一部取消」285件、「全部取消」90件の合計2846件(前年度比▲2.6%)だった。納税者の主張が何らかの形で認められた救済割合は同5.8ポイント増の13.2%となった。

一方、訴訟となった発生件数は、所得税(26.7%増の76件)や消費税(153.8%増の33件)、徴収関係(26.9%増の33件)など多くの税目が増加したことから、全体では前年度を23.2%上回る223件だった。訴訟の終結件数は、「取下げ等」21件、「却下」10件、「棄却」164件、「国の一部敗訴」5件、「国の全部敗訴」16件の合計216件(前年度比22.0%増)。国側の敗訴(納税者勝訴)割合は同6.3ポイント増の9.7%と大きく増加した。

このような納税者救済・勝訴割合は、あくまでも結果論だが、全体でみると、2019年度中に再調査の請求・審査請求・訴訟を通して納税者の主張が一部でも認められたのは、処理・訴訟の終結件数の合計4575件(前年度5250件)のうち583件(同486件)で、その割合は12.7%(同9.3%)と、再調査の請求での救済割合はほぼ横ばいだったものの、審査請求・訴訟が増加し、前年度に比べて3.4ポイント増で推移している。

2019年度における再調査の請求の概要は↓
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/saichosa/index.htm

同審査請求の概要は↓
https://www.kfs.go.jp/introduction/demand.html

同訴訟の概要は↓
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/sosho/index.htm

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