先日、国税庁が2019年度の査察事績を公表し、同年度は検察庁への告発件数が116件だったことが明らかになった。査察は、昨今の経済取引の広域化、国際化及びICT化等により脱税手段・方法が複雑・巧妙化している中で、経済社会情勢の変化に的確に対応し悪質な脱税者告発に努めている。それは、消費税事案や無申告ほ脱事案、国際事案のほか、急速に市場が拡大する分野などへの積極的な取組みだ。

消費税事案については、国民の関心が極めて高いこと、また、受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高いものであることから、積極的に取り組まれた。2019年度の消費税事案の告発件数は32件(前年度41件)だったが、うち受還付事案は11 件(同16件)だった。また、無申告ほ脱事案の告発件数は27件(同18件)で、うち2011年度に創設された単純無申告ほ脱犯を適用した事案が11件(同10件)あった。

告発事例には、架空の宝飾品輸出を装った消費税不正受還付事案がある。貿易業を営むB社・C社の実質経営者であるAは、取引実態がないにもかかわらず、国内での宝飾品仕入を装い架空仕入(課税取引)を計上、香港法人への販売を装い架空輸出売上(免税取引)を計上する方法により、多額の消費税還付金額を記載した内容虚偽の消費税の確定申告を行い、不正に消費税の還付を受け、または受けようとした(一部未遂)。

また、単純無申告ほ脱犯を適用した事案は、初めて告発した2014年度以降最多の11件を告発した。告発事例では、芸能スタイリスト会社の単純無申告ほ脱事案がある。E社は、大手芸能プロダクション等から衣装デザイン及びコーディネート等のスタイリスト業務を受注し、多額の利益を得ていたが、法人税及び消費税の申告義務を認識していながら、確定申告を一切行わずに故意に納税を免れていた。

国際課税への取組みも重要な課題であり、査察においても、国外取引を利用した悪質・巧妙な不正を行っている国際事案にも積極的に取り組まれた。2019年度の国際事案の告発件数は25件(前年度20件)。告発事例では、情報商材に関する取引などで得た多額の利益を、 海外の法人を利用して不正に法人税を免れた事業者について、外国との間で締結した租税条約に基づく情報交換制度を活用するなどして、不正取引を解明し告発したものがある。

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