いわゆるマルサと呼ばれる査察は、脱税でも特に大口・悪質なものが強制調査され検察当局に告発されて刑事罰の対象となる。国税庁が11日に公表した2019年度査察白書によると、同年度に査察で摘発した脱税事件は前年度より17件少ない165件で、その脱税総額は前年度を4.4%下回る約120億円だった。今年3月までの1年間(2019年度)に、全国の国税局が査察に着手した件数は150件と、前年度(166件)を16件下回った。

継続事案を含む165件(前年度182件)を処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)し、うち70.3%に当たる116件(同121件)を検察庁に告発。この告発率70.3%は前年度を3.8ポイント上回った。2019年度は、消費税の輸出免税制度を利用した消費税受還付事案(11件告発)や、自己の所得を秘匿し申告を行わない無申告ほ脱事案(27件告発)などに積極的に取り組み、無申告ほ脱事案は過去5年間で最も多くの告発を行っている。

近年、査察における大型事案は減少傾向にあり、2019年度の脱税総額119億8500万円は、ピークの1988年度(約714億円)の約17%にまで減少している。1件当たり平均の脱税額は7300万円で、ここ5年は1億円を下回っている。告発分の脱税総額は前年度を17.0%下回る92億7600万円となり、統計が残る1972年度以降、過去最少となった。1件当たり平均の脱税額は8000万円となっている。

告発分を税目別にみると、「法人税」が前年度から9件増の64件で全体の約55%を、脱税総額でも約56億円で約61%をそれぞれ占めた。「所得税」は同3件増の17件(脱税総額約16億円)、「消費税」は同9件減の32件(同約20億円)、「源泉所得税」は同7件減の3件(同約0.6億円)、「相続税」は0件(前年度1件)。消費税の告発件数のうち11件は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)のものだった。

告発件数の多かった業種は、「建設業」(前年度28件)と「不動産業」(同14件)がともに19件でトップ、次いで「人材派遣」が10件(同5件)で、この上位の顔ぶれは前年度と変わらない。なお、2019年度の査察では、国際事案を25件告発したほか、近年、投資用不動産販売やインターネット広告関連など、市場が拡大する分野や時流に即した脱税事案等、社会的波及効果が高いと見込まれる事案に対しても積極的に取り組んでいる。

同査察白書の概要は↓
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2020/sasatsu/r01_sasatsu.pdf

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