緊急事態宣言の解除によって、各自治体からの営業自粛要請等が徐々に緩和されているが、これまでの営業自粛要請等に伴い事業運営に影響が出ている事業者に対し、国から様々な支援策が打ち出されている。例えば、事業所やお店等を休業した際、従業員を解雇せず、雇用の維持を図った場合に助成される雇用調整助成金がある。助成の対象となるのは、休業させた場合に「休業手当」を支払った部分である。

「休業手当」は、会社都合により従業員が働けない状態にある場合に、会社が平均賃金の6割以上を支払うように定めた制度(労働基準法26条)だ。その対象となる「休業」とは、「所定労働日(労働契約に従って働く義務がある日)に、従業員が労働の意思と労働の用意を備えているにもかかわらず、会社側の都合で休ませる」ことをいう。休業手当はあくまでも賃金なので、所得税の課税対象となり、源泉徴収が必要になる。

一方、「休業補償」は労災に関係する制度で、労働基準法76条に定められている。業務中に生じた怪我や病気が原因で、やむを得ず働けなくなった従業員を補償することが目的で、休業開始4日目以降に労災保険から平均賃金の80%が支払われる。こちらは賃金ではなく補償なので課税対象にはならない。また、休業開始3日間は労災保険の支払い対象外となるので、この間は会社が平均賃金の6割を負担することになる。

会社負担なので、一見、休業手当と勘違いされやすいが、こちらも休業補償の扱いとなり課税対象とはならない。以上のように、「休業手当」と「休業補償」は、言葉が似ているために混同されやすいが、実際には支給事由も支給元も異なる、まったく別の制度だ。とはいえ、どちらも労働基準法で定められた制度で、労働者を守るという点では共通している。税務上の取扱いも含め、正しく理解し運用することが求められる。

提供:株式会社タックス・コム