租税特別措置法では、法人が一定の要件を満たす減価償却資産を取得して事業の用に供した場合には、減価償却費の計算の特例として、普通償却額(通常の減価償却費)に加えて特別償却額(追加の減価償却費)を損金算入することを認めている。これは、本来の減価償却とは別に、投資の促進等を目的とする政策上の要請から、一定の要件の下で特別に通常よりも償却限度額を大きくすることを認めたものだ。

特別償却は、事業の用に供した初年度に取得価額の一定額(例えば30%)について普通償却を上回って償却できるが、割増償却は、償却期間にわたって普通償却限度額の一定額について普通償却を上回って償却できる。狭義の特別償却は、初年度特別償却の形をとることにより一時の投資促進を図るが、割増償却は、一定期間にわたる償却額の割増の形をとることにより、一定期間にわたる投資の維持を図ることになる。

ところで、特別償却(割増償却を含む)の計上に当たって、特別償却対象資産ごとに特別償却不足額(特別償却としての損金算入額が特別償却限度額に満たない場合のその満たない金額)がある場合には、普通償却とは異なり、1年に限り繰り越すことができる。特別償却が政策減税であることから、1年に限りその適用を猶予した措置。この規定は、特別償却不足額を適用する事業年度まで継続して青色申告であることが要件となる。

特別償却については、それが会社法(会社計算規則)に規定する相当の償却を超える場合もあること、また特別の政策目的をもって償却額を増加させることで投下資本の回収や資金繰りを緩和させることを狙いとしたものであるが、企業の財政状態に応じ可能な範囲において償却させるべきものであり、これを特定の事業年度のみに負担させることは適当でないことから特別償却に限り償却不足額の1年間の繰越しが認められているわけだ。

なお、租税特別措置法において認められている特別償却には現在、「中小企業者等の機械等の特別償却」、「特定中小企業者等の経営改善設備の特別償却」、「特定設備等の特別償却」、「被災代替資産等の特別償却」、「医療用機器等の特別償却」など18種類ある。また、割増償却には、「障害者を雇用する場合の機械等の割増償却」、「企業主導型保育施設用資産の割増償却」、「特定都市再生建築物の割増償却」など5種類ある。

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