建物の1階が店舗で2階以上の部分が住居になっている賃貸マンション等をよく見かける。このような、2つ以上の用途がある建物を賃貸に出すケースで、減価償却費の計算に使用する耐用年数は、税法上、住居部分と店舗部分で別々に耐用年数を使用して計算することが原則となる。ただし、一つの建物が2つ以上の構造により構成されている場合でも、「構造・用途が著しく異ならない限り」は、主な構造の耐用年数を一括して適用する。

そもそも、建物の減価償却費の計算に使用する耐用年数は、その建物の「構造」と「用途」によって決まるが、同一の減価償却資産について、その用途により異なる耐用年数が定められている場合において、その減価償却資産が2つ以上の用途に供されているときは、その減価償却資産の用途については、その使用目的、使用の状況等により勘案して合理的に判定することとされている。

つまり、1つの建物が2つ以上の用途に使用されていたとしても、その用途ごとに別々の耐用年数を使用して減価償却をするのではなく、あくまでも建物全体の使用目的等により勘案し判定した、主たる用途の耐用年数を適用して減価償却費の計算をするということになる。例えば、店舗併用住宅が5階建(鉄筋コンクリート造の場合)で1階が店舗(耐用年数39年)、2階以上が住居(同47年)となっているケースをみてみよう。

このケースでは、使用面積等をみて住居が主たる使用目的と判定できれば、店舗部分を含めた建物全体に耐用年数47年が適用され減価償却を行うわけだ。また、建物の地下等に設けられている電気室や機械室、駐車場等のようにその建物の機能を果たすために必要な補助的部分(専ら区分した用途に供されている部分を除く)についても、これを用途ごとに区分せず、その建物の主たる用途について定められている耐用年数を適用することになる。

上記のように、建物の用途が2つ以上ある場合でも、使用目的・使用状況などを考慮して、主な用途を合理的に判断して、法定耐用年数を決定するのだが、例外もある。それは、1つの建物を2つ以上の用途に使用するために、その建物の一部について特別な内部造作をしている場合には、その建物を用途ごとに区分して、その用途について定められている耐用年数をそれぞれ適用することができる特例だ。

提供:株式会社タックス・コム