2020年度税制改正では、「居住用賃貸建物の消費税還付スキーム」や「海外の中古不動産投資を利用したスキーム」などの個人の節税策を封じ込める見直しが目立つが、その一つに「住宅ローン控除の特例と居住用財産の譲渡特例の併用」を制限するものがある。住宅ローン控除の特例の適用要件の一つには、居住した年とその前後の2年間の計5年間に居住用財産の譲渡特例の適用を受けていないことがある。

一方、居住用財産の譲渡特例は、新規住宅及びその敷地の用に供されている土地等以外の資産(従前住宅等)について、その居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡に適用できることとされている。ところが、現行法上、住宅ローン控除の特例を受けた3年後に従前住宅等を譲渡することで居住用財産の譲渡特例を併用して受けられるという問題点が、会計検査院から指摘されていた。

これを受けて今回の改正では、「新規住宅をその居住の用に供した個人が、その居住の用に供した日の属する年から3年目に該当する年中に従前住宅等の譲渡をした場合において、その者が従前住宅等の譲渡につき居住用財産の譲渡特例の適用を受けるときは、新規住宅について住宅ローン控除の特例及び認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除の適用を受けることができないこととする」とした。

その上で、居住用財産の譲渡特例として、(1)居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例、(2)居住用財産の譲渡所得の特別控除、(3)特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例、(4)既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例を挙げている。なお、この改正は、2020年4月1日以後に従前住宅等の譲渡をする場合について適用される。

提供:株式会社タックス・コム