2020年度税制改正においては、海外の中古不動産投資を利用した節税策が封じ込められることになる。海外中古不動産に投資し、耐用年数の短さを利用して多額の損失を計上した上で、給与所得や事業所得を通算して租税負担の軽減を図るという節税策は、高額所得層を中心にかなり広範に行われている。この種の租税回避策については、あまりにも行き過ぎているのではないかとして、会計検査院報告でも問題視されていた。

会計検査院は、2015年度検査報告で「各国の不動産は、気候や構造の違いにより、滅失までの期間が大きく異なるにもかかわらず、1951年から見直しされていない『中古資産の耐用年数の簡便法』(法定耐用年数を経過した古い建物については、耐用年数の20%の年数で償却してよいという制度)を適用するのは合理的でない」と指摘し、財務省に見直しを求めていた。これを踏まえて、2020年度の税制改正で所要の手当てがなされる。

2020年度税制改正大綱によると、国外中古建物に係る損益通算の特例を創設するとして、「個人が、2021年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その損失の金額のうち、国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は、所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす」とした。

「国外中古建物」とは、個人において使用され、又は法人において事業の用に供された国外にある建物であって、個人が取得をしてこれをその個人の不動産所得を生ずべき業務の用に供したもののうち、不動産所得の金額の計算上その建物の償却費として必要経費に算入する金額を計算する際の耐用年数を、「法定耐用年数の全部を経過した資産は法定耐用年数の20%」などの方法により算定しているものをいう、としている。

つまり、赤字のうち減価償却相当額は認められないという見直しとなる。現在の節税策の仕組みは、不動産の貸付による損失(多額の減価償却が要因)と給与所得を相殺して所得を圧縮するという「損益通算」を利用するものだが、これを認めなくするという改正となる。また、「改正日以降に取得した資産から適用」ではなく、「改正日以降の申告から適用」となり、結果的に、現在の所有者も影響を受けることになる。

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