国税庁は、経済社会の国際化への適切な対応のため、海外投資を行っている個人や海外資産を保有する個人などに対し、積極的に調査を実施している。同庁は、2018事務年度に海外投資者等を対象に4375件(前事務年度4616件)の実地調査を実施し、総額約849億円(同977億円)の申告漏れ所得を把握した。1件平均では1941万円(同2166万円)で、この金額は、実地調査(特別・一般調査)全体での1件平均1045万円の約1.9倍にのぼる。

海外投資調査4375件を取引区分別にみると、「海外投資」(預貯金等の海外での蓄財を含む海外の不動産や証券などに対する投資)が全体の37.0%を占める1618件、「輸出入」(事業での売上や原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引)が同10.2%の447件、「役務提供」(工事請負やプログラム設計など海外において行う、労力・技術等の第三者に対するサービスの提供)が同7.9%の344件となっている。

そのほか、海外で支払いを受ける給与や贈与(親族に対する海外送金等)など海外取引に係るもので上記の取引に該当しない「その他」が全体の44.9%を占める1966件だった。これらの海外取引調査の結果、1件当たりの申告漏れ所得が平均で1941万円見つかったわけだが、取引区分別では、「海外投資」で2175万円、「輸出入」で862万円、「役務提供」で2107万円、「その他」で1965万円が、それぞれ1件当たりの平均となる。

事例では、いわゆるタックスヘイブン対策税制上、適用除外要件のうち事業基準を満たさず、雑所得課税を行ったものがある。調査対象者Aは、軽課税国において外国関係会社X社を主宰しているところ、部内資料等から、X社が、国内の複数の事業者から、多額の国外からの送金を受領していることが判明。送金内容は、著作権の使用料と想定されたことから、タックスヘイブン対策税制の適用の可否を確認するため、調査が行われた。

調査において取引の内容を確認したところ、X社の主たる事業は、著作権の提供であり、タックスヘイブン税制の適用除外基準のうち、事業基準を満たしていないと認められたことから、X社の課税対象金額を、Aの雑所得に係る収入金額とみなして課税を行った。Aに対しては、所得税4年分に係る申告漏れ所得金額約2億2100万円について、追徴税額(加算税含む)約1億1800万円が課税されている。

提供:株式会社タックス・コム