無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすことになるため、的確かつ厳格な対応が求められる。無申告者は、その存在自体の把握が難しいことから、国税当局は、有効な資料情報の収集や活用を図り、積極的に調査を実施している。国税庁が今年6月までの1年間(2018事務年度)に実施した高額・悪質と見込まれた無申告者に対する実地調査は8147件(前事務年度7779件)行われた。

実地調査の結果、申告漏れ所得金額の総額は1658億円(前事務年度1662億円)把握。追徴税額は、総額で197億円(同207億円)、1件当たりでは242万円(同267万円)だった。2018事務年度は実地調査(特別・一般)全体が5万130件行われているから、全体の約16%が無申告者に対する調査に充てられ、実地調査(同)全体の申告漏れ所得金額6024億円の約28%が無申告者に係るものだったことになる。

1件当たりの申告漏れ所得金額は2035万円となり、前事務年度の2136万円からは▲4.7%とやや減少したものの、実地調査(特別・一般)全体の1件当たり申告漏れ所得金額1045万円の約2倍と高額だ。前事務年度に比べ調査件数は4.7%増加している。こうした調査結果からいえることは、結構高額な所得がありながら、国税当局にはばれまいと高をくくって申告しない納税者がいかに多いかということだろう。

また、消費税の無申告者に対しては、2018事務年度において実地調査(特別・一般)9631件(前事務年度9400件)が行われた結果、追徴税額は169億円、1件当たりでは176万円と、2011事務年度以降、過去最高となった。同事務年度の消費税に係る実地調査(同)全体は2万8504件行われており、全体の約34%が無申告者に対する調査に充てられ、消費税の実地調査(同)全体の追徴税額275億円の約62%が無申告者に係るものだった。

調査事例では、調査対象者Aが札束や高級車を誇示しているとの一般人からの情報が寄せられ、調査の結果、事業として内装業を営んでいたAは、売上額を本人以外の従業員名義の預金口座に振り込ませており、かつ、自身は住民税申告で給与所得者を装って、事業所得の無申告が判明した。Aに対しては、所得税5年分の申告漏れ所得金額約8800万円について、追徴税額約3100万円、消費税2年分の追徴税額約2600万円が課されている。

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