オンラインショッピングやネット広告などインターネット取引はすっかり定着しており、なかには年間1億円を超す売上があるネット業者も珍しくない。しかし、多額の利益を上げながら、ネット上の売上は国税当局には把握されまいと考え、無申告・過少申告する業者が後を絶たない。ネット取引は、無店舗による事業形態となるため、その把握は困難だが、国税当局は、あらゆる有効な資料情報を収集・分析して適正な課税に努めている。

国税庁によると、今年6月までの1年間(2018事務年度)において、ネット取引を行っている個人事業者などを対象に2127件(前事務年度2015件)を実地調査した結果、1件当たり平均1243万円(同1087万円)の申告漏れ所得金額を把握した。この申告漏れ額は、同時期の実地調査における全体での1件平均819万円の約1.5倍となっている。申告漏れ所得金額の総額264億円(同219億円)に対し58億円(同37億円)を追徴した。

調査事例では、偽ブランド品をネットで販売し、多額の利益を生じていたものの、無申告だった者に対して課税したものがある。調査対象者Aは、部内資料等から、ネットショップを営んでおり多額の収入を得ていることが想定されたものの、配偶者の扶養親族だとして連年無申告だったことから調査に着手した。調査の結果、写真共有アプリを利用し、インターネット上で財布やバッグ等の偽ブランド品の販売を行っていたことが判明した。

Aは、国外事業者のサイトで販売している商品の写真を、写真共有アプリにアップロードし、顧客から購入注文があると、その顧客から商品代金を預かり、その後、その国外事業者に注文し、直接顧客へ商品を発送するよう依頼する。Aの利益は、顧客から預かった商品代金と、発注先へ送金した商品代金の差額であり、Aは、その利益が生じていたことは認識しながら、税負担を免れるため、意図的に申告していなかった。

なお、Aは、顧客のID、氏名及び商品発送先の住所と受注商品、金額などを記載した顧客名簿等を作成していたが、証拠資料になると考え、取引の都度、全て破棄していた。Aに対しては、所得税4年分の申告漏れ所得金額約5400万円について追徴税額(重加算税を含む)約1700万円が課されている。

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