国税庁によると、個人に対する今年6月までの1年間(2018事務年度)の所得税調査は、前事務年度(62万3千件)に比べ1.9%減の61万1千件行われた。そのうち、約61%に当たる37万4千件(前事務年度38万4千件)からほぼ横ばいの9041億円(同9038億円)の申告漏れ所得を見つけた。その追徴税額は同0.1%減の1195億円(同1196億円)。1件平均148万円(同145万円)の申告漏れに対し17万円(同17万円)を追徴した。

実地調査における特別調査・一般調査(高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に行う深度ある調査)は、前事務年度に比べ0.8%増の5万件を実施、うち約88%に当たる4万4千件から同3.1%増の総額5236億円の申告漏れ所得を見つけ、同1.8%増の903億円を追徴。件数では全体の8.2%に過ぎないが、申告漏れ所得金額は全体の57.9%を占めた。調査1件当たりの申告漏れは1045万円と、全体平均の148万円を大きく上回る。

また、実地調査に含まれる着眼調査(資料情報や事業実態の解明を通じて行う短期間の調査)は、前年度比1.0%増の2万3千件行われ、うち1万7千件から同3.2%減の788億円の申告漏れを見つけ、59億円を追徴。1件当たり平均申告漏れは336万円。一方、簡易な接触は、同2.3%減の53万7千件行われ、うち31万3千件から同4.0%減の3017億円の申告漏れを見つけ233億円を追徴。1件当たりの平均申告漏れは56万円だった。

実地調査トータルでは、前事務年度比0.9%増の7万4千件の調査を行い、うち6万1千件から同2.2%増の6024億円の申告漏れを見つけ、961億円を追徴。つまり、実地調査件数は全体の12.1%と約1割に過ぎないが、申告漏れ所得全体の6割半ば(66.6%)を把握しており、高額・悪質な事案を優先して深度ある調査を的確に実施する一方、短期間で申告漏れ所得等の把握を行う効率的・効果的な所得税調査が実施されていることが裏付けられた。

このように、近年の所得税調査の特徴は、高額・悪質と見込まれるものを優先して深度ある調査(特別調査・一般調査)を重点的・集中的に行い、一方で実地調査までには至らないものは電話や来署依頼による“簡易な接触”で済ます調査方針にある。なお、業種別1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な業種は、「風俗業」(2685万円)、「キャバクラ」(2278万円)、「経営コンサルタント」(2045万円)までがワースト3。

この件については↓
http://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/shotoku_shohi/pdf/0019011-068.pdf

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