国税不服審判所はこのほど、2019年1月から3月分の裁決事例を同所HP上にある「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」に追加し公表した。今回公表された裁決事例は、10事例(国税通則法関係2件、所得税法関係2件、法人税法関係2件、相続税関係1件、登録免許税法関係1件、国税徴収法関係2件)だった。うち3事例で納税者の主張が認められて全部取り消されており、実務家にとっても参考となろう。

このうち、国税通則法関係では、売上金額を脱漏する目的で、取引先に依頼し、決済方法を変更したなどの事実があったとは認められないとして重加算税の賦課決定処分を全部取り消した事例がある。原処分庁は、請求人の代表者は銀行振込みでなければ売上に計上されないことを認識した上で、取引先に決済方法を銀行振込みから小切手に変更するよう依頼して、売上を脱漏した行為は国税通則法に規定する事実の隠ぺいに該当する旨主張した。

しかし裁決は、決済方法が銀行振込みから小切手に変更されたのは、その取引先の事情によるものであり、代表者がその取引先に対して決済方法の変更を依頼した事実が確認できず、また、その他の証拠においても、代表者が売上代金を銀行振込みされなければ売上に計上されないと認識していたことを裏付ける証拠も認められないことから、請求人に通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺいがあったとは認められないと判断した。

法人税法関係では、原処分庁が、請求人が譲渡した不動産開発に係る開発権の譲渡契約書等には、本件開発権が決済日前に適法かつ有効に取引先に移転し取得され承継手続が全て完了している旨記載されていると主張したが、その記載は、譲渡対価の支払条件等を定めたものであって、その条件が成就されているとの趣旨ではないことから、原処分庁の主張はその前提を欠いているとして、賦課決定処分を全部取り消した事例がある。

また、登録免許税法関係では、建物の固定資産課税台帳の台帳価格には、台帳価格が付された時点より前に生じた損耗が反映されておらず、その損耗を考慮した上で、登録免許税法に規定する価額(時価)として、固定資産評価基準に基づきその建物の適正な時価を算定すべきと判断して、原処分庁が還付通知をすべき理由がない旨の通知処分をしたのに対して、同処分の全部の取消しを求めた請求人の主張が認められた事案がある。

この件については↓
http://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/114.html

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