国税庁はこのほど、老人ホーム入居中に自宅を相続した場合の小規模宅地の特例の適用について、東京国税局が文書照会に応じて回答した事例を公開した。「小規模宅地の特例(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)」とは、被相続人の自宅の土地や事業用の土地を相続する場合、一定の要件を満たすことで相続税を計算する際の土地の評価額が最大8割引になる制度。

適用要件には、相続開始直前において被相続人の居住や事業の用に供されていた宅地等であること等の条件があり、老人ホーム入居中に亡くなった場合でも、要介護認定、自宅を賃貸していない、都道府県に届け出ている老人ホームである等の要件をクリアすれば適用対象となる。今回公開された事例は、法令上特段の規定が設けられていない「所有」の有無に関するもの。

被相続人甲は有料老人ホーム(届出済)に入居直前まで居住していた家屋及びその敷地に供されていた宅地を、別の老人ホームに入居していた配偶者乙から相続により取得。その後、本件家屋に戻ることなく死亡した。本件家屋は被相続人が老人ホームに入居後は空き家状態。また、被相続人甲は要介護認定を受けている。照会は、本件宅地等を長男丙が相続により取得した場合でも小規模宅地の特例を適用できると解してよいか、とする内容だった。

相続開始の直前において被相続人の居住用に供されていなかった宅地等が、本件特例の対象となる居住用に供されていた宅地等に該当するか否かについては、被相続人が有料老人ホーム等に入居等して居住用に供されなくなった直前の利用状況で判定することとされているが、その時において被相続人が宅地等を所有していたか否かについては、法令上特段の規定は設けられていない。

したがって照会者は、本件宅地等は、被相続人が有料老人ホームに入居し居住用に供されなくなった直前において、被相続人甲の居住用に供されていたものであることから、その時において被相続人甲が本件宅地等を所有していなかったとしても本件特例の対象となる宅地等に該当すると解され、長男丙は本件特例の適用を受けることができるものと解釈した。これに対し東京国税局は、照会者の見解を認める回答をしたもの。

この件については↓
http://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/souzoku/181207/01.htm#a01

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