経済の国際化に伴い、企業や個人による国境を越えた経済活動が複雑・多様化している。海外取引等のある法人の中には、海外の取引先との経費を水増ししたり、売上を除外するなどの不正計算を行うものが見受けられる。このような悪質な海外取引法人等に対して、国税当局は、海外への資金移動に着目した資料情報の収集や租税条約に基づく情報交換制度の積極的な活用などにより、深度ある調査に取り組んでいる。

国税庁によると、今年6月までの1年間(2017事務年度)における海外取引法人等に対する調査は、1万6466件(前事務年度比21.2%増)行われ、うち27.3%に当たる4500件(同34.9%増)から海外取引等に係る非違を見つけ、3670億円(同55.1%増)の申告漏れ所得金額を把握した。うち696件(同39.2%増)は、租税回避行為など故意に不正計算を行っており、その不正所得金額は206億円(同0.0%)にのぼった。

調査事例では、外国子会社に決算書の改ざんを指示し、外国子会社合算税制の適用を回避していたA社のものがある。調査において代表者を追求した結果、外国子会社合算税制の適用回避を目的に、A社の完全子会社Xに対して「完全孫会社Yに対する売上」を過少表示するよう決算書の改ざんを指示していたことが判明。A社に対しては、4年分の法人税申告漏れ所得3億5000万円について3900万円を追徴課税(加算税込み、重加算税あり)した。

一方、経済取引の国際化に伴い、企業や個人による国境を越えた経済活動が複雑・多様化するなか、国税庁では、非居住者や外国法人に対する支払(非居住者等所得)について、源泉所得税の観点から、重点的かつ深度ある調査を実施している。こうした中で、外国法人に対する工業所有権等の使用料や人的役務提供事業の対価などの支払について、源泉徴収を行っていなかった事例が数多く見受けられたという。

2017事務年度の調査では、給与等や使用料、人的役務提供事業などについて国際源泉所得税の課税漏れを1684件(前年度比8.2%増)見つけ、78億2800万円(同84.1%増)を追徴課税した。国際源泉所得税の非違の内訳(追徴本税額2000万円以上)は、「人的役務提供事業」、「使用料等」に係るものがともに28%を占めて最多、次いで「不動産賃貸等」12%、「給与等」、「不動産譲渡」がともに9%などとなっている。

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