財務省は、仮想通貨取引をめぐる所得税の課税逃れ防止策強化に向けて本腰を入れ始めた。また、国税庁では、2017年12月に仮装通貨取引に関する所得計算方法を公表するとともに、その内容について仮装通貨関連団体に対して顧客等への通知・広報を依頼するなど、関係者の協力を得ながら、仮装通貨取引等の適正な申告と納税に向けた環境整備に努めているところだ。

仮想通貨の売却等で生じる所得は、原則として「雑所得」に区分され確定申告の対象となる。しかし、2017年分の申告で「仮想通貨取引による収入がある」と判別できている人は331人にとどまっており(公的年金等以外の雑所得に係る収入が1億円以上の人数)、また、申告書に「仮想通貨取引による所得か否か」は記載事項とされていないこともあり、正確な把握が難しい状況にある。

こうしたなか財務省では、10月24日、29日の両日に「納税環境整備に関する専門家会合」を開催。仮想通貨取引をめぐる自主的な適正申告の促進策について専門家からのヒアリングを行った。ヒアリングでは、国税庁主催の「仮想通貨取引等に係る申告等の環境整備に関する研究会」において、仮装通貨交換業者から顧客に対する申告に必要な情報の提供など、仮想通貨取引に係る申告の利便性向上に向けた方策を協議中であることが報告された。

また、2018年分の確定申告から国税庁が個人の納税者に対して“仮想通貨の計算書”を提供する予定であること等も踏まえ、仮想通貨交換業者各社では顧客(納税者)が“仮想通貨の計算書”を簡易に作成できるよう“年間報告書”の提供を行う方針であること (顧客から求めがあった場合には、取引履歴のデータも提供)、仮想通貨交換業者各社はこれらの対応について、ウェブサイトにて公表する方針であることなどを確認した。

そのほか、自主的な適正申告の担保策としては、情報照会制度や、取引で得た所得にかかる税を仮想通貨交換業者などが源泉徴収する制度の導入、一定額を超える資産を持っていたり国外送金したりする際に提出が義務づけられる「法定調書」を新たに仮想通貨取引にも設ける案が出された。このうち情報照会制度については、先行導入している欧米の事例を参考に検討を進める方向だ。

一方、法定調書の作成や源泉徴収を行う事業者には事務負担が生じることにも留意が必要との声もあり、そうした事務負担の簡素化も含めた検討が必要であるとの慎重論が出ている。財務省は今後、政府税制調査会での議論を踏まえ、申告漏れ対策の強化に向けた具体的な方策について検討を進める。

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