2019年10月1日から消費税率が10%へ引き上げられるが、ニッセイ基礎研究所のレポートは、今回は主に3つの理由から、前回と比べて家計の負担が抑えられると予測している。1つ目の理由は、税率の引上げ幅が今回は+2%と、前回の+3%と比べると家計の負担感は弱いためだ。なお、総務省「2017年家計調査」から推計すると、軽減税率を考慮しない単純計算では、月平均+4.5千円、年平均+5.4万円の負担増となる。

2つ目の理由は、軽減税率制度が同時に実施されるため。低所得者への配慮から、「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」が対象となる。食料は高年収世帯でも消費支出に占める割合が最も高く、購入頻度も高いため、税率が変わらないことは消費者の心理的負担を和らげる可能性もある。例えば、軽減税率を考慮すると、上記の総世帯の平均負担は月平均+3.6千円、年平均+4.3万円に下がる。

3つ目は同時期に幼児教育無償化の措置が全面的に開始されるためだ。無償化の対象範囲は、0~2歳児は当面は住民税非課税世帯、3~5歳児は認可保育所や認定こども園、子ども・子育て支援新制度の対象となる幼稚園を利用している世帯であり、認可外保育施設を利用している世帯は無償化の上限額が設定されている(0~2歳児は月額4.2万円、3~5歳児は月額3.7万円)。

家計消費は30代から世帯当たりの消費が増え始め、50代をピークに、60代以降は減少する。家計消費が伸びる30~40代の子育て期の消費をいかに伸ばすかが、日本の消費市場全体を拡大させる鍵とも言える。子育て世帯の消費状況は、可能な限り消費を抑制し、貯蓄へつなげる傾向が見える。幼児教育無償化の措置は、子育てにかかる出費がかさみ、増税による負担感が強い子育て世帯の必需的消費を比較的大きく減らす効果が見込める。

さらに、今回も住宅や自動車購入時の負担軽減策など消費下支え策が検討されている。レポートは、「増税に伴う負担軽減策の検討も当然重要だが、そもそも若い世代ほど雇用の不安定化や賃金の減少で厳しい経済環境にあり、将来の社会保障不安もあることを考えれば、現役世代の雇用の安定化や可処分所得の引上げ、社会保障制度の持続性確保の検討も引き続き進めなければならない」と指摘している。

同レポートについては↓
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=59980

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