財務省の発表によると、「税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」(BEPS防止措置実施条約)の寄託者である経済協力開発機構(OECD)の事務総長が公表した9月27日時点の情報として、我が国が本条約の対象とすることを選択している租税条約の相手国のうち、オーストラリア、スロバキア、フランスの3国が新たに本条約の批准書、受託書又は承認書を寄託したという。

BEPS防止措置実施条約は、各租税条約の両締約国がその租税条約を同条約の対象とすることを選択し、かつ、同条約が両締約国について発効している場合に、その租税条約について適用されるところ、我が国と上記の3国との間の租税条約については、2019年1月1日にこの条件を満たすこととなる。同条約の規定のうち各租税条約に適用される規定及び各租税条約に対する同条約の適用の開始については、各締約国の選択に応じて異なる。

同条約は、BEPSプロジェクトにおいて策定されたBEPS防止措置のうち租税条約に関連する措置を、同条約の締約国間の既存の租税条約に導入することを目的としている。同条約により導入可能なBEPS防止措置は、(1)租税条約の濫用等を通じた租税回避行為の防止に関する措置、及び、(2)二重課税の排除等納税者にとっての不確実性排除に関する措置から構成される。

同条約の各締約国は、既存の租税条約のいずれを同条約の適用対象とするかを任意に選択ができ、また、同条約に規定する租税条約に関連するBEPS防止措置の規定のいずれを既存の租税条約について適用するかを所定の制限の下で選択できる。なお、BEPS防止措置実施条約の署名国は9月27日現在で82ヵ国・地域だが、我が国が同条約の適用対象として選択している我が国の租税条約の相手国・地域は39ヵ国・地域となっている。

ちなみに、我が国が適用することを選択している同条約の規定には、(1)課税上存在しない団体を通じて取得される所得に対する条約適用、(2)双方居住者に該当する団体の居住地国の決定、(3)租税条約の目的に関する前文の文言、(4)取引の主たる目的に基づく条約の特典の否認、(5)主に不動産から価値が構成される株式等の譲渡収益に対する課税、(6)相互協議手続の改善、(7)移転価格課税への対応的調整、に関する規定などがある。

この件については↓
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/press_release/20181002mli.htm

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