2018年度税制改正により、公的年金等の支給を受ける権利の消滅時効が完成した場合に、その権利の消滅時効を援用せずに支払われる年金については、源泉徴収を要しないことになった。本年4月1日以後に支払われる公的年金等から適用されている。消滅時効とは、ある事実が一定の期間継続した場合に、事実に即した権利の消滅を認める制度。国民年金法第102条には、年金受給権に関する消滅時効の規定が設けられている。

具体的には、「年金給付を受ける権利は、その支給事由が生じた日から5年を経過したときは、時効によって、消滅する」と規定されている。年金を受ける権利の時効は、年金の支給を受ける権利が発生してから5年を経過すると消滅する。ただし、時効期間が過ぎれば自然に成立するものではなく、時効が完成するには時効によって利益を受ける者(国)が、時効が成立したことを主張する必要があり、この主張を「時効の援用」という。

基本権である「年金給付を受ける権利」は、5年の消滅時効の期間が定められているが、やむを得ない理由がある場合には、国は基本権の時効を援用しない取扱いとしている。例えば、日本年金機構による年金記録の訂正により年金が増額した場合や事務処理誤り等があった場合で一定の事由に該当すると、消滅時効が完成した場合においても、時効の援用はされず年金が支払われている。

2018年度税制改正における見直しは、公的年金等の源泉徴収義務規定から消滅時効を援用せずに支払われる年金を除外するというもの。これに伴い、公的年金等に係る確定申告不要制度における、全ての公的年金等が源泉徴収されていることとの要件も見直され、全ての公的年金等には、消滅時効を援用せずに支払うこととされた公的年金等を含まないことが規定されている。

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