わが国の最重要課題の一つは財政の健全化だが、その主たる目標とされた国と地方の基礎的財政収支(PB)の黒字化は、目標達成時期が先送りされて現在に至っている。経済同友会はこのほど、政府がまとめる予定の新たな目標設定を含む財政健全化計画に関する提言を発表した。提言は、PB黒字化は団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者になる2025年度より前に実現すべきことを強く主張した。

提言では、社会保障関係費の伸びを抑える歳出削減が重要と指摘。具体的には、2019~2021年度の3年間で、社会保障関係費の伸びを1.5兆円以下とし、団塊世代が後期高齢者になり始める2022年度より前に、これまで以上に厳しい歳出抑制に取り組むべきとした。その際、企業の負担増によって安易に財源を捻出するのではなく、まずは給付費の増加の抑制や適正化を目指すべきことを提案した。

今後も増加が予想される社会保障関係費の財源としては、税収が安定的で、国民が広く薄く負担する消費税が望ましいと指摘。税率の引上げに際しては、毎年1%ずつ自動的に引き上げること等によって、増税前の駆込み需要やそれに伴う反動減を抑制すべきとの考えを示した。そのためにも、2019年10月の消費税率10%への引上げを確実に実施するとともに、ポスト10%の引上げに係る議論を早期に開始することを求めた。

この提言では、より現実的な成長見通しに基づいて、内閣府試算(2027年度まで)を超える超長期の財政の姿を描くため、2045年度までの長期財政試算を行った。その結果、ベースシナリオ(全要素生産性(TFP)上昇率が2018年度以降、将来にわたって平均1.1%で推移)では、税率10%引上げ後、年1%ずつ税率を上げると、2024年度にPBが黒字化し、2045年度までPB黒字化を維持するために必要な消費税率は17%となった。

同友会は、「国民の納得感と安心感を得られる改革を実現するためには、超党派で国民的議論を喚起し、検討、政策合意し、たとえ政権交代しようとも確実に財政健全化を達成すべき。そのためには、税と社会保障の一体改革のビジョンと具体策を再構築することが必要。将来世代に大きな負担を残すことなく、痛みを伴う改革に取り組むためには、国民的な合意が不可欠」との考えを示している。

「新たな財政健全化計画に関する提言」は↓
https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/uploads/docs/180515a.pdf

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