被相続人が生前に勤めていた会社から相続人が受け取る金銭のうち、死亡退職金は相続税の課税対象になる一方、弔慰金は課税されない。弔慰金は、香典や花輪代、葬祭料といった名目で支払われることもあるが、税務上、社会通念上相当と認められるものは所得税や贈与税が課税されないことになっている。そこで、判断に迷うのは「社会通念上相当と認められる金額」の範囲である。

相続税基本通達(3-20)では、亡くなった従業員に支給されるべきだった退職手当金や功労金など、その名義のいかんにかかわらず実質上退職手当金等に該当するものを除き、弔慰金として取り扱うこととしている。具体的には、業務上死亡の場合には賞与以外の普通給与額の3年分相当額を、また、業務上の死亡でない場合には、普通給与額の半年分相当額を、非課税となる弔慰金として取り扱うことを定めている。

この範囲を超える部分は、相続税の課税対象となる退職手当金等として取り扱うこととしている。仮に、その通達により弔慰金として取り扱われたもののなかに、社会通念上相当と認められる額を超える部分があるとすれば、本来、その部分は退職手当金等として取り扱うべきであり、その通達により弔慰金として取り扱ったものについては、社会通念上相当と認められる範囲内のものである、というのが国税当局の考え方である。

つまり、弔慰金は、原則として社会通念上という国民感情の観点から課税の対象とはならないことになっているが、課税されないことを利用して節税として使われることがある。そこで、弔慰金として妥当と判断できる一定の金額は課税せず、超えた部分は過度な弔慰金と判断して、課税対象にしている。そして、弔慰金は従業員の死亡退職に伴い会社から支払われるため、退職手当金等として相続税の課税対象となるわけだ。

なお、上記の「業務上の死亡」とは、被相続人が亡くなった原因が業務中に起こったことであり、業務と関係性が深い原因がある場合には業務上の死亡と判断される。例えば、業務遂行中に発生した事故等により亡くなった場合や、出張中に発生した事故等で亡くなった場合、仕事が原因とされる職業病によって亡くなった場合などが該当する。また、通勤途中の災害についても業務上の死亡と判断される。

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