源泉徴収が必要な報酬・料金等の範囲は、その報酬・料金等の支払を受ける者が、個人であるか法人であるかによって異なっている。個人の仕事で源泉徴収の対象となる報酬・料金等は、所得税法204条1項に定められている。それは、(1)原稿料や講演料、デザイン料等、(2)弁護士や司法書士、税理士など特定の資格を持つ人に支払う報酬・料金、(3)社会保険診療報酬支払基金法の規定により支払われる診療報酬。

さらに、(4)プロスポーツ選手やモデル、外交員などに支払う報酬、(5)芸能人や芸能プロダクション等を営む個人に支払う報酬、(6)宴会等において、接待等を行うことを業務とするホステスや、バーやキャバレーなどに勤めるホステスに支払う報酬、(7)契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金、(8)広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金、のいずれかに該当する報酬・料金であれば、源泉徴収をする必要がある。

一方、報酬・料金等の支払を受ける者が法人の場合の源泉徴収の対象となる範囲は、馬主である法人に支払う競馬の賞金が該当する。また、支払を受ける者が研究会、劇団などの団体などである場合の、個人か法人かの判定は、支払を受ける者が、法人税を納める義務があること又は定款、規約、日常の活動状況などから、団体として独立して存在していることを明らかにした場合は法人として取り扱い、そうでなければ個人として取り扱う。

報酬・料金等の中には、謝礼、研究費、取材費、車代などの名目で支払われているものもあるが、その実態が報酬・料金等と同じであれば源泉徴収の対象になる。しかし、報酬・料金等の支払者が、直接交通機関等へ通常必要な範囲の交通費や宿泊費などを支払った場合は、報酬・料金等に含めなくてもよいことになっている。金銭ではなく、物品で支払う場合も報酬・料金等に含まれるので注意が必要だ。

そのほかの注意事項としては、消費税及び地方消費税の取扱いがある。報酬・料金等の額の中に消費税等の額が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額が源泉徴収の対象となる。ただし、請求書等において、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象として計算することも認められている。

なお、報酬・料金等から徴収した源泉所得税については、原則、その翌月10日までに納付する必要があるが、所得税の納期の特例の承認を受けている場合には、弁護士や司法書士、税理士などに支払う報酬に限り、1月と7月の納付が認められている。ちなみに、これらに支払う報酬は『給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書』、それ以外の報酬・料金等は『報酬・料金等の所得税徴収高計算書』に記入して納付するので注意したい。

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