日本税理士会連合会(神津信一会長)の税制審議会(会長:金子宏東京大学名誉教授)はこのほど、2017年10月に諮問のあった「個人所得課税における控除方式と負担調整のあり方について」に対する検討結果を取りまとめ、会長に答申した。同審議会は、所得金額の計算における概算控除制度は可能な限り縮小する必要があること、基礎控除などの人的控除制度を抜本的に見直すべきことを、基本的な認識として示している。

給与所得控除については、2018年度税制改正において、控除額を一律10万円引き下げるとともに、控除の上限額を195万円とし、その適用対象となる給与収入金額を850万円にそれぞれ引き下げた。答申によると、この改正は、過大な給与所得控除の改善に資するものと評価することもできるが、給与所得者が実際に負担する必要経費の実態からみると、微調整を行ったに過ぎず、所得金額の計算の適正化を図るものとはいえないと指摘。

所得金額の計算に当たっては、実額の必要経費のみを控除するのが原則だが、概算控除制度を廃止し、全ての給与所得者に記帳義務を課すことは実際問題として困難、また、実額の必要経費控除制度とすると、年末調整制度が機能しないことになるなどを勘案すると、概算控除制度を存置することもやむを得ないとした上で、その控除額は、給与所得者の実際の必要経費の実態を踏まえた水準にすることが適当との考えを示している。

一方、人的控除制度のあり方については、基礎的な人的控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除等)と特別な人的控除(障害者控除、扶養控除等)以外の所得控除(社会保険料控除、生命保険料控除、雑損控除、医療費控除等)は、それぞれの控除の役割と意義を検証した上で、廃止すべきもの、縮小すべきもの及び税額控除方式へ移行すべきものに区分し、複雑化した現行の所得控除制度を簡素化する必要があるとした。

そこで、人的控除制度の見直しに当たっては、若年層及び低所得者層を支援するとともに、所得再分配機能の回復を図る観点から、所得控除を縮小し、その一部を税額控除にシフトする視点が重要だとし、当面は、課税最低限を規律している基礎的な人的控除の額を引き上げた上で所得控除方式として存置し、その他の所得控除項目の整理合理化を図りつつ、可能な範囲で税額控除方式とすることが適当との考えを示している。

同答申は↓
http://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/doc/nichizeiren/business/taxcouncil/toushin_H29.pdf

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