適格請求書発行事業者には、課税事業者に返品や値引き等の売上に係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書の交付義務が課されている。ただし、適格請求書の交付義務が免除される場合と同様、一定の場合には、適格返還請求書の交付義務が免除される。それは、(1)3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送、(2)出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売。

さらに、(3)生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限る)、(4)3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等、(5)郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)、などの場合に、適格返還請求書の交付義務が免除される。

上記のほか、売上に係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務が免除される。この1万円かどうかの判定は、値引き等の金額に標準税率が適用されたものと軽減税率が適用されたものが含まれている場合であったとしても、適用税率ごとの値引き等の金額により判定するものではなく、返還した金額や値引き等の対象となる請求や債権の単位ごとの減額金額により判定することとなる。

また、売上に係る対価の返還等とは、事業者の行った課税資産の譲渡等に関し、返品を受け又は値引き若しくは割戻しをしたことにより、売上金額の全部若しくは一部の返還又はその売上に係る売掛金等の債権の額の全部若しくは一部の減額を行うことをいう。したがって、このような売上金額の返還や債権の減額の金額が1万円未満であれば、適格返還請求書の交付義務が免除されることとなる。

具体的には、返還した金額や値引き等の対象となる請求や債権の単位ごとに減額した金額により判定することとなる。例えば、500,000円の請求に対し、買手は振込手数料相当額440円減額した499,560円を支払った(売手は、440円を対価の返還等として処理)ケースでは、1万円未満の対価返還等であり、適格返還請求書の交付義務は免除される。

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