経済のグローバル化に伴い、企業や個人の海外取引や海外資産の保有・運用形態が複雑・多様化するなか、国税庁では、CRS(共通報告基準)に基づく非居住者金融口座情報(CRS情報)やCbCR(国別報告事項)の自動的情報交換、租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換を積極的に実施している。わが国の情報交換ネットワークも、2023年1月1日現在で84条約等(151ヵ国・地域に適用)まで拡大している。

国税庁が公表した昨年6月までの1年間(2021事務年度)における租税条約等に基づく情報交換事績の概要によると、我が国にとって4回目となるCRS情報の自動的情報交換において、外国居住者の金融口座情報約65万件(口座残高約4.9兆円)を77ヵ国・地域に提供した一方、日本の居住者の金融口座情報約250万件(同14兆円)を94ヵ国・地域から受領。これらの情報は、富裕層による海外資産隠しなどの税務調査に生かす。

また、国税庁から日本に最終親会社等がある901グループのCbCRを60ヵ国・地域に提供した一方、外国税務当局から2246グループのCbCRを53ヵ国・地域から受領した。CbCRの自動的情報交換は、OECD のBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの勧告(行動13「多国籍企業情報の文書化」)に基づくもの。受領したCbCRは、移転価格リスク評価その他のBEPS に関連するリスク評価及び統計に使用することとしている。

そのほか、2021事務年度に国税庁から外国税務当局に発した「要請に基づく情報交換」の要請件数は639件(前事務年度638件)。他方、外国税務当局から国税庁に寄せられた要請件数は128件(同251件)となった。また、「自発的情報交換」については、2021事務年度に国税庁から外国税務当局に提供した件数は73件(同106件)。他方、外国税務当局から国税庁に提供されたのは448件(同2万351件)と大幅に減少している。

なお、わが国にとって5回目となる2021事務年度のCRS情報の自動的情報交換では、2022年12月31日までに、日本の居住者に係る金融口座情報約257万件(速報値)を95ヵ国・地域の外国税務当局から受領した一方、外国居住者に係る金融口座情報約53万件を国税庁から76ヵ国・地域の外国税務当局に提供している。「アジア・太平洋州」が18ヵ国・地域から受領口座数約183万件、13ヵ国・地域から提供口座数約40万件と最も多い。

2022事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要は↓
https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0023001-024.pdf

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