国税庁は、高額なタワーマンションなどの不動産の売買価格と相続税評価額との大きな乖離を活用した、いわゆる“タワマン節税”の是正に向けて検討を開始した。同庁では、1月31日に「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」を開き、マンションの相続税評価について、市場価格との乖離の実態を踏まえた上で、評価額を適正な水準に上げるルールの見直しを検討する。

相続税法では、相続等により取得した財産の価額は「当該財産の取得時の時価(客観的な交換価値)」とされており、その評価方法は国税庁の通達によって定められているが、マンションについては、「相続税評価額」と「市場売買価格(時価)」とが大きく乖離しているケースも把握されている。他方、通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価するとされている(基本通達6項)。

そこで、相続税の申告後に、国税当局から、路線価等に基づく相続税評価額ではなく鑑定価格等による時価で評価し直して課税処分をされるケースも発生した。こうしたケースで争われた、2022年4月の最高裁判決(国側勝訴)以降、マンションの評価額の乖離に対する批判の高まりや、市場への影響を懸念する向きも見られ、納税者の予見可能性確保の観点からも、早期にマンションの評価に関する通達を見直す機運が高まっていた。

2023年度与党税制改正大綱においても「相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」と記載された。このため、国税庁は、「乖離の実態把握とその要因分析を的確に行った上で、不動産業界関係者などを含む有識者の意見も丁寧に聴取しながら、通達改正を検討していく」こととしたとの、有識者会議を設置した理由を述べている。

なお、2022年4月の最高裁判決は、相続した賃貸マンションの評価額が実勢価格より低すぎるとして国税当局が再評価して追徴課税した事案を適法としている。事案は、相続が近いことを予測してマンション2棟を約13億9千万円で銀行借入して購入し、その評価が4分の1の価格で申告されたもの。相続に係る課税価格の合計は6億円を超えるものだったが、この購入・借入により、基礎控除の結果、相続税の総額が0円だった。

この件については↓
https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0023001-051.pdf

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