少額減価資産の取得価額の損金算入制度は多くの企業が適用する特例の一つだが、2022年度税制改正において見直される。減価償却資産は、通常、法定耐用年数に基づいて計算した減価償却費を損金算入することとなるが、使用期間が1年未満又は取得価額が10万円未満の少額の減価償却資産は、事業の用に供した年度に取得価額の全額を損金算入することができる。

税制改正大綱には、「少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度について、対象資産から、取得価額が 10 万円未満の減価償却資産のうち貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供したものを除外する(所得税についても同様とする)」との見直しが明記された。改正後は、貸付けの用に供したものは、取得価額の全額を損金算入することができなくなり、通常の減価償却により損金算入することとなる。

見直しの背景には、工事現場などで使用される足場材料やドローン、LED照明などを大量購入し、それらの資産を貸付けの用に供することで投下資金を数年かけて回収し、実質的に課税の繰延べを図る節税対策が近年増加傾向にあることがある。足場材料やドローンは、1単位当たり10万円未満で購入可能のため、事業の用に供した年度に取得価額の全額を損金算入することができ、課税の繰延べが可能となっている。

今後、このような節税スキームが封じられることになるが、主要な事業として行われる場合は除かれるので、リース・レンタル事業者や不動産賃貸業者などがその事業のために賃貸する少額の減価償却資産は、主要な事業として行われる貸付けと考えられ、取得価額の全額を経費計上することができるとみられる。適用開始時期については、税制改正大綱には明示されていないが、2022年4月1日以後に取得等する減価償却資産からとなる見込み。

また、一括償却資産の損金算入制度(減価償却資産の取得価額:20万円未満)や中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(同:30万円未満)も同様の取扱いとなり、主要な事業として行われる場合を除き、貸付けの用に供したものは、通常の減価償却により損金算入することとなる。なお、税制改正大綱では、「主要な事業として行われる貸付け」の内容も明らかとされておらず、現時点では不明だ。

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