税務情報レポート
MJS税経システム研究所・税務システム研究会の顧問・客員研究員による租税を中心とした多彩な研究成果および最新の税制改正および制度や動向、判例研究等に関するリポートです。
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2026/06/05 税務行政
KSK2(ケーエスケー2)がやってくる!~国税当局のデータ化プロジェクトの正体~
はじめに去る4月22日、国税庁はホームページで「国税システムの更改について」と題する文書を公表しました。そこには、「国税庁では、令和8年9月24日に国税システムの更改を予定しています。納税者の皆様にご注意いただきたいことを順次お知らせしていきます。」とあります。読者の中には、「国税システムの更改は、納税者や税理士には関係ない。」と思っておられる方もいるかもしれません。ところが、国税システムの更改は、納税者、税理士、そして会計ソフト会社など全ての関係者を巻き込む一大プロジェクトと考えるべきです。本稿では、国税庁の基幹システムであるKSK2の本格導入が、将来的に税理士や納税者などの関係者にどのように影響するのか、4月下旬時点の情報に基づいて解説していきたいと思います。1.KSKからKSK2へ税務行政における電子化については、事務の効率化・高度化を進めるため、昭和41年(1965年)に東京国税局にADPセンターを開設して、コンピュータによる事務処理の第一歩を踏み出しました。その後、平成7年(1995年)からKSK(国税総合管理)システムの試行的な導入を開始し、平成13年(2001年)から全国全ての国税局・税務署で活用してきました。その後、e-Taxが2004年に導入されるなどして、今日に至っています。KSKシステムは、全国の国税局と税務署をネットワークで結び、地域や税目を越えた情報の一元的な管理により、各種事務処理の高度化・効率化を図るために導入した基幹システムです。そして、新しい国税総合管理システム(KSK2)が本年9月24日より本格稼働されることになった、というのが4月22日のアナウンスのポイントです。2.KSK2の目的KSK2の目的は、次のとおりです。デジタルの活用による納税者の利便性の向上、課税・徴収の効率化・高度化そこで、国税総合管理システムの次世代システムとしてKSK2の開発が進められてきました。KSK2については、データ中心の事務処理を実現するシステム(紙からデータ)現在、税目別となっているデータベース・アプリケーションの統合(縦割りシステムの解消)独自OSを使用する大型コンピュータを中心としたいわゆる「メインフレーム」から、市販の汎用的なOSを使用するいわゆる「オープンシステム」への刷新(メインフレームからの脱却)といったことを開発コンセプトとしています。3.国税システムの更改(4月22日公表)の概要国税システムの更改では、次のようなことが公表されました。(1)申告書等の様式の変更多くの申告書や申請・届出書、法定調書の様式が新しくなる予定です。4月22日現在では、合計1795の様式が変わるとのことです。詳しくは、国税庁のホームページを見ていただくとして、主要税目別では次に掲げる表のようになります(税目の下の数字は変更される様式の数)。関係税目等様式名称様式公開時期受付開始時期申告所得税(220)申告書一表・二表・三表・四表、申告書付表(R7年)等令和8年6月頃令和8年9月24日以降源泉所得税(83)給与支払事務所の開設・移転・廃止届出書令和8年6月頃様式公開直後譲渡所得税(108)株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書令和8年12月頃様式公開直後相続・贈与税(368)贈与税の申告書第1表(R7年)等令和8年12月頃様式公開直後財産評価(29)特定株式等の判定及び比準要素等の金額の計算等の明細書令和8年6月頃様式公開直後法人税(155)別表1(青色申告)令和7年4月1日以後終了事業年度等分令和8年8月頃令和8年9月24日以降消費税(125)消費税及び地方消費税の申告書(一般用)【令和元年10月1日以後終了課税期間分】令和8年8月頃令和8年9月24日以降(出典:国税庁資料を一部改訂)(2)所得税徴収高計算書(納付書)の様式変更等①納付書の様式等について、次のように変更される予定です。納税者の識別に使用する「整理番号(8桁)」を「お問い合わせ番号(13桁)」に変更「お問い合わせ番号」とは、税務署から送付する文書と納税者情報とを紐づけるためにシステムで自動的に払い出される番号です。なお、税務署の窓口では「お問い合わせ番号」があらかじめ印字(現行の整理番号と同様に印字)された所得税徴収高計算書(納付書)を配付しますので、納税者の方に記載していただく必要はありません。「納期等の区分」欄等に元号の記載欄を追加「徴収義務者」欄に郵便番号及びフリガナの記載欄を追加②様式のサイズ税務署の窓口で配付する所得税徴収高計算書(納付書)は、現行のA4三つ折りサイズ程度の複写式から、A4サイズの単票式に変更することを予定しています。③その他現行様式(整理番号欄がある複写式)の所得税徴収高計算書(納付書)は、令和10年9月頃まで使用することができる予定です。A4サイズの単票式による所得税徴収高計算書(納付書)のイメージ画像は、令和8年6月下旬頃、国税庁ホームページでお知らせします。(3)国税システムの更改に伴うメンテナンス時間以下の期間は、国税システムの更改のためe-Taxが利用できません。【メンテナンス時間(e-Tax利用不可時間)】令和8年9月19日(土)0:00~9月24日(木)8:30令和8年9月26日(土)0:00~24:004.国税システムの更改(4月22日公表)の本質とはここまで、4月22日の公表内容について説明してきました。実は、ここからが重要になります。これまでの国税庁の公表資料を見ていくと、今回のKSK2の本格稼働は、国税庁にとって非常に重要な意義があります。この点、本レポート一回では書ききれないので、別の機会に譲るとして、ポイントだけをお伝えします。まず、国税庁は社会の複雑化やIT化に対応するため、2017年には「税務行政の将来像~スマート化を目指して~」を公表し、KSK2を2020年代半ばに稼働させるとしていました。その後、2021年に公表した「税務行政のデジタルトランスフォーメーション」において、2026年の稼働を目指すとしていました。要するに、9年越しの新プロジェクトとなります。次に、KSK2により、紙からデータに移行することにより、税務行政の効率化と高度化を実現することです。e-Taxの普及などにより、納税者の資料を少しずつデータ化できるようになってきましたが、これが加速することになります。そして、これまで税目毎にしか取れなかったデータの縦割りを排除し、納税者毎に所得や資産状況を把握することができるようになるでしょう。つまり、国税庁は、納税者のデータを税目横断的に把握することができるようになると思われます。一方、納税者や税理士にとっては、所得税、法人税、消費税といった経常事務をデータ化することにより、効率化を図ることができるようになるでしょう。最近の税理士業界の人手不足を補うため、IT化が進むことで税理士事務所運営に資することになる可能性が高いです。最後に、会計ソフト会社に対して、あらかじめ様式等を示すことにより、KSK2と整合的な会計ソフトの開発をしてもらうことになります。おわりに本稿は、KSK2の導入時期が決まったこと、それに伴う申告書等の様式の変更があること、などを解説してきました。そして、その目的は、納税者の利便性の向上と国税当局の調査・徴収の効率化と高度化にあります。これを敷衍すれば、国税当局によるデータ化の加速により、納税者情報を税目横断的に管理することにより、調査・徴収を効率化することができるということです。4月22日の公表資料の本質は、KSK2という新しい国税管理システムの本格稼働により国税当局による納税者情報の把握がステップアップすることにあります。来年以降、調査や徴収を行う場合にこれまで以上の情報に基づいて行われることが予想できます。一方、紙からデータへの流れが加速することは、納税者や税理士にも良い影響があると思います。今回の公表資料により、会計ソフト会社はKSK2に適合するソフトを開発し提供することになります。そして、これにより税理士の日常業務だけでなく、中小企業などの事業者の経理にも影響が及ぶことになるでしょう。最初は慣れるまで大変かもしれませんが、AI―OCRがより使いやすくなったりするなど、日常業務の効率化に資するものと思われます。今後も国税庁からKSK2に関して様々な情報が公表されることになりますが、納税者や税理士にわかりやすい情報発信を希望したいと思います。提供:税経システム研究所
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2026/06/02 相続・贈与税
配偶者居住権を利用すると二次相続の課税を回避できる
1.配偶者居住権が創設された背景配偶者居住権とは、建物の所有者が死亡した後も、その配偶者が引き続きその建物に無償で居住し続けることができる権利で、配偶者の一身専属権です。平均寿命の高齢化に伴い、被相続人の死亡後その配偶者が長期間にわたり生存することが少なくありませんが、配偶者は被相続人の死亡後も、被相続人とともに住んでいた建物での居住の継続を望むところです。この場合、居住用の不動産の価額が相続財産の総額に対して相当な割合を占めていると、遺産分割において老後の生活資金を十分に確保しづらくなります。そこで、不動産の価値を所有権と配偶者居住権とに分割し、配偶者が配偶者居住権を取得し、他の相続人(一般的には子)が所有権を取得すれば配偶者にとって不動産の取得額は下がることになり、結果的に老後の生活資金をより多く確保できるようになります。これが、令和2年に配偶者居住権が設けられた経緯です。2.配偶者居住権の特徴と存続期間配偶者居住権は、無償で居住することができますが、使用貸借とは異なり、その権利は登記を行うことによって第三者に対抗することができますので、法的性格は賃貸借に近いといえます(民1028、1031)。配偶者居住権の取得は、遺贈又は遺産分割協議によります(民1028)。したがって遺産分割が完了した後に取得することはできません。配偶者居住権の存続期間は終身とされますが、遺言や遺産分割協議によって一定の期間を定めることもできます(民1030)。配偶者居住権は一身専属権ですので、配偶者居住権を譲渡することはできず(民1032②)、あらかじめ定めた終期が来た段階で消滅します。また、一定の期間を定めた場合で、その期間が満了する前に配偶者が死亡した場合もその時点で消滅します。3.配偶者居住権に対する課税上の対応配偶者居住権は譲渡できない資産ではあるのですが、配偶者居住権の存在によって所有権の価値が下がること、配偶者が施設へ入居するなどにより配偶者居住権を途中で放棄すると所有権の価値が上がること、配偶者居住権の存続中にその不動産が譲渡されると、配偶者もその時点の配偶者居住権の価値に見合う対価を受けること、などから配偶者居住権についても財産上の価値を認め、相続税、贈与税、譲渡所得課税の対象にしています(相法23の2、相令5の7、相規12の2~4、相基通9-13の2、所法60②③、所基通60-3~10)。また、配偶者居住権は建物に対する権利であり土地には適用されませんが、その敷地については利用権としての効果が及びますので、課税上は土地についても配偶者居住権の価値があるものとしています。なお、配偶者居住権に係る譲渡所得は、建物に係る権利の譲渡に該当するため、敷地部分も含め総合課税の譲渡所得になります(措通31・32共-1かっこ書き)。また相続税に関して、配偶者居住権が設定された建物の敷地は、土地の上に存する権利に該当しますので、小規模宅地の特例を受けることができます。4.配偶者居住権の評価(土地)配偶者居住権に係る土地の評価は、まず所有権の評価を先に行い、その土地の全体の評価額から所有権の評価額を控除した額が、土地に対する配偶者居住権の評価額になります。所有権の評価について、子は配偶者居住権が終了するまで、その土地を有効活用することができませんので、配偶者居住権が終了するときの価値(下図C)から相続開始時点(下図B)に遡って民法の法定利率である3%による複利現価率を乗じた額が評価額になります。配偶者居住権の存続期間が終身とされている場合の存続期間は、厚生労働省から公表されている完全生命表による平均余命年数によります。平均余命年数と複利現価率は、国税庁の「配偶者居住権等の評価明細書」の裏面に記載されています。これらの関係を図解すると、次のようになります。5.配偶者居住権の評価(建物)配偶者居住権に係る建物の評価は、土地と同様にまず所有権の評価を先に行い、その建物の全体の評価額から所有権の評価額を控除した額が、建物に対する配偶者居住権の評価額になります。建物に係る所有権の評価についても、土地と同様に配偶者居住権が終了するときの価値(下図C)から相続開始時点(下図B)に遡って民法の法定利率である3%による複利現価率を乗じた額が評価額になるのですが、建物の価値は年とともに徐々に減価していきますので、配偶者居住権が消滅するときの価値は、その減価した後の金額になります。建物の減価の額は、建物が建築された日(下図A)から非事業用資産の耐用年数(下図A~D)によって計算します。なお所得税における非事業用資産に対する計算方法とは少し異なり、事業用の耐用年数を1.5倍する場合には6か月以上の端数を切り上げ、耐用年数が満了した時点(下図D)での価値はゼロとして減価の額を計算します。これらの関係を図解すると、次のようになります。配偶者居住権の具体的な計算については、国税庁の「配偶者居住権等の評価明細書」を用いて計算することができます。6.配偶者居住権に関する課税上の留意点配偶者居住権の評価額と所有権の評価額を合計すると、上記のように相続開始時点での土地又は建物の評価額になります。この場合、配偶者居住権の評価額は、総じて高く算定される傾向があり、その反対に、所有権の評価額は低くなります。配偶者居住権の評価額が高くなっても、配偶者の税額軽減制度によって、通常は相続税が課税されませんので、その影響は少ないと考えられます。他方、子にとっては、所有権の評価額が反射的に低くなることにより、相続税の負担額は減少することになります。なお、配偶者の税額軽減制度によって配偶者の税負担額がゼロになっても、配偶者居住権の敷地に対して小規模宅地の特例が適用できると、課税価格の合計額が下がるので、さらに相続税の総額は下がることになります。したがって、配偶者居住権を利用すると、一次相続において子が所有権を取得してしまいますので、二次相続における課税を避けることができます。このため、配偶者居住権を適用できる環境にある場合は、相続税の依頼者に対して配偶者居住権についての説明を検討する必要があるかと思われます。(参考)国税庁「配偶者居住権等の評価明細書」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hyoka/annai/pdf/1470-16-2.pdf提供:税経システム研究所
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2026/05/27 相続・贈与税
非居住者である子供へ贈与する場合の注意点
1.はじめに今回は、非居住者へ財産を贈与する場合の贈与税の課税関係や注意点について、簡単な事例をもとに確認していきたいと思います。仕事などの関係で海外に居住しているケースは多くなっていますが、特に日本国内に居住している親や祖父母が、海外に居住している子供や孫に財産を贈与したいという話は実務上もよくでてきます。この場合の課税関係については、居住者に対する贈与に比べ注意すべき事項も多くなってきます。【事例】甲(父)は海外に居住する乙(娘)に生活費や海外で家を購入するための資金、保有する有価証券等を贈与してあげたいと考えている。贈与者甲(父):65歳日本国内の居住受贈者乙(娘):30歳5年前に日本を出国し海外に居住(非居住者※国籍は日本)(1)贈与税の納税義務者について①非居住無制限納税義務者に該当受贈者乙は贈与時点において日本国内に居住していませんが、日本国籍があり贈与前10年以内に日本に居住しており、また、贈与者である甲は贈与時に日本国内に居住していますので、乙は非居住無制限納税義務者に該当します。(下記判定表を参照)無制限納税義務者になりますので、特に居住者への贈与とかわらずに国内財産、海外財産の全てが贈与税の課税対象になります。贈与税納税義務者判定②納税管理人届出書の提出納税義務者である受贈者乙は日本国内に住所がないため、申告書の提出や国税関係の手続きをおこなうために、納税管理人を選任する必要があります。納税管理人と納税地を定めて納税管理人届出書を提出する必要があります。(2)相続時精算課税の適用の検討相続時精算課税は受贈者についての居住地の要件はありません。非居住者である乙についても、他の相続時精算課税の要件を満たしていれば問題なく適用が可能です。また、相続時精算課税贈与の対象には国外財産も含まれます。(3)住宅取得等資金の贈与税非課税の適用甲は娘の乙が海外で家を購入するための資金の贈与を検討しています。この場合、まず、住宅取得等資金の贈与税非課税の制度の適用を検討することが多いと思います。住宅取得等資金の贈与税非課税制度は直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、省エネ等住宅については1,000万円まで、それ以外の住宅については500万円まで贈与税が非課税となる制度です。乙は贈与を受けた時の住所が国内にありませんが、(1)①の非居住無制限納税義務者に該当していますので、本制度の対象となります。ただし、対象となるのは日本国内にある住宅用家屋となるため、本件のように海外の自宅を購入する場合には適用対象とはなりません。(4)生活費などの贈与①必要な都度おこなう生活費等の贈与扶養義務者から生活費または教育費に充てるためにした贈与のうち通常必要と認められるものを必要な都度、必要な金額を贈与している場合には、贈与税は非課税となります。生活費を海外送金により贈与する場合でも例外ではなく、国内の場合と同様に贈与税は非課税となります。甲は乙に生活費や教育資金、結婚や子育て資金についても必要な都度、必要な金額(通常必要と認められる範囲のもの)を贈与する分には贈与税は非課税となります。②国外送金等調書に注意一度に100万円を超える金額を国外に送金するような場合、金融機関は税務署へその支払い内容を記載した国外送金等調書を提出することになります。この場合、当事者に税務署から送金内容についてのお尋ね等が届く場合がありますので、しっかり送金内容について説明できるようにしておきましょう。③一括贈与の非課税特例①の必要な都度贈与とは別に、一括贈与の非課税特例として「結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」の規定があります。(同種の規定として「教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」規定がありましたが、令和8年3月末で終了したため割愛します)規定の概要としては、贈与者(祖父母や両親等の直系尊属)から、受贈者(子・孫)へ金融機関等との一定の契約と手続きを条件に、結婚・子育て資金を一括して拠出した場合に、この資金について1,000万円までを非課税とする制度です。受贈者について居住者や日本国籍を有する者といった限定はありませんので、非居住者の乙についても本制度の対象となります。ただし、日本国内の金融機関を通して手続きをおこなう必要があるため、非居住者の場合、金融機関によっては手続きが煩雑になる可能性があります。また、海外での出産費用や海外の保育園費用等はこの制度の対象とならない可能性がありますので、実際の利用については難しい場面が多くなるかもしれません。(5)有価証券の贈与国外転出(贈与)時課税に注意国外転出(贈与)時課税とは、贈与の時点で、1億円以上の有価証券等を所有している一定の居住者が、非居住者へ対象資産を贈与した場合に、その贈与時に、贈与対象資産の譲渡等があったものとみなして、その贈与対象資産の含み益に対して所得税が課税される制度です。実際に有価証券の売却をしていないのに贈与者に譲渡所得税が課税され、さらに受贈者には贈与税が課税されることにもなりますので、かなり厳しい規定といえます。本件の場合も甲が乙に有価証券を贈与する時に、時価ベースで甲が保有する有価証券等の総額が1億円以上ある場合にはこの規定の対象になってしまいます。納税猶予の規定等もありますが、有価証券の贈与をおこなう場合には事前によく検討をする必要があります。提供:税経システム研究所
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2026/05/20 相続・贈与税
税理士損害賠償事故事例(法定相続人の数を誤認したことにより過大納付相続税額が発生した事例)
1法定相続人の数を誤認したことによる税理士損害賠償事故事例(1)税理士損害賠償事故事例の傾向税理士損害賠償事故事例(以下「事故事例」とします)について、税目別に直近10年間の事故事例を集計すると、消費税の事故事例が圧倒的に多くなっています(事故事例のうち約50%)。消費税の次に多い税目が法人税(約25%)・所得税(約15%)の順に続き、相続税の事故事例は3税目と比較すると低い傾向にあり、相続税の事故事例は大半が小規模宅地等に関連するものです。(2)令和6年度版の相続税関連の事故事例株式会社日税連保険サービスから公表された令和6年度版(令和6(2024)年7月1日から令和7(2025)年6月30日の期間)では、30件近い事故事例が掲載されていますが、そのうち相続税関係の事例16で「法定相続人の数を誤認したことによる事故事例」が紹介されています。消費税等の事故事例に多い「届出書の提出失念」とは異なり、事例16は法令の規定の認識不足が原因であり、大部分の税理士が同様の誤ちを犯す可能性が高いものであることから、次の2で事故事例の内容を掲げます。2事例16の内容(1)事故の概要税理士は、令和2年に依頼者から相続税申告の依頼を受け申告しました。その際、被相続人の配偶者はすで死亡しており、実子2人の他に配偶者の実子で被相続人の養子となった者が2人いましたが、税理士は法定相続人の数に含める養子の数の制限により養子の数は1人までに制限されるものと思い込み、法定相続人の数を3人として相続税の計算を行いました。しかし、実際には、被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となった者は実子とみなされるため、この制限から除かれ、法定相続人の数は4人でした。後日、依頼者から法定相続人の人数について誤認していることを更正の請求期限後に指摘され、これにより発生した過大納付相続税額について、税理士は依頼者から損害賠償請求を受けました。(2)事故発覚の経緯依頼者本人が自身の相続税対策を考える必要性を感じ相続税について調べていたところ、法定相続人の数に含める養子の数について誤りに気が付き、税理士に照会したことにより過誤が発覚しました。(3)事故の原因税理士が法定相続人の数に含める養子の数の制限について誤認していたため。(4)税賠保険における判断税理士が当初申告において、法定相続人の数に含める養子の数の制限について正しく認識していれば、法定相続人の数を4人で申告することができたとして、税理士に責任ありと判断されました。(5)支払保険金過大納付相続税額約1,800万円を認容損害額とし、免責30万円を控除した約1,770万円が保険金として支払われました。3法定相続人の数の制限規定とその除外規定の確認法定相続人の数の制限規定とその除外規定について確認すると、次の(2)・(3)のようになります。(1)法定相続人の数を基にする相続税の計算相続税の計算をする場合、次の4項目は法定相続人の数を基に行います。相続税の基礎控除額(相法15①)生命保険金の非課税限度額(相法12①五)死亡退職金の非課税限度額(相法12①六)相続税の総額の計算(相法16)(2)上記(1)の計算における法定相続人の数の制限上記(1)の計算をする際の法定相続人の数に含める被相続人の養子の数は、次の場合には一定数に制限されています(相法15②)。実の子供の有無法定相続人の数に含める養子の数①被相続人に実の子供がいる場合1人まで②被相続人に実の子供がいない場合2人までなお、養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合(以下「不当減少養子」とします)には、その原因となる養子の数は、上記①または②の養子の数に含めることはできません(相法63)。(3)上記(2)の制限が除外される場合次のいずれかに該当する者は、実の子供として取り扱われますので、すべて法定相続人の数に含まれます(相法15③)。被相続人との特別養子縁組により被相続人の養子となっている者被相続人の配偶者の実の子供で被相続人の養子となっている者相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となっていた者で、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった者被相続人の実の子供・養子または直系卑属が既に死亡しているか、相続権を失ったため、その子供などに代わって相続人となった直系卑属。なお、特別養子縁組とは、何らかの事情で実の親が子どもを育てられない場合に、子どもが安定した家庭で生きていけるよう支援する公的な制度をいい、子どもと実親との法的な親子関係を解消し、養親との間にのみ実子と同じ親子関係を成立させるものです(民法817の2他)。(4)制限規定と除外規定について事故事例への当てはめ上記2の事故事例に係る税理士は、相続税の総額等の計算における「法定相続人の数の制限規定(相法15②)」は認識していましたが、「法定相続人の数の制限規定に対する除外規定(相法15③)」を認識していなかったことが事故の原因といえます。相続税法第15条第3項に規定する「被相続人の配偶者の実の子供で被相続人の養子となっている者」を認識していれば、上記2の事故事例は防げたことになります。(5)不当減少養子について上記2の事故事例では触れられていませんが、税務調査での対応に備えて、養子の人数については上記(2)の「不当減少養子(相法63)」の課題もあることに留意する必要があります。提供:税経システム研究所
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2026/05/13 消費税
令和8年度消費税改正② インボイス制度に係る経過措置~免税事業者等からの課税仕入れに係る税額控除~
1.はじめに令和8年9月30日に適用期限が終了する次のインボイス制度に係る経過措置について、見直しが行われることになりました。小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)適格請求書発行事業者以外の者(以下「免税事業者等」といいます。)からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置(80%控除)今回は、上記イの「免税事業者等からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置」(以下「本経過措置」といいます。)の見直しについて見ていきます。2.本経過措置の控除可能割合(1)改正の趣旨消費者が支払った消費税相当分の一部が、本経過措置により、納税されずに事業者の収入になっており、本経過措置は段階的に縮減されます。しかし、インボイス制度の影響を受ける小規模な国内事業者への配慮として更なる激変緩和を図る観点から、その最終的な適用期限を2年延長した上で、控除ができる割合について段階的に縮減していき、令和13年9月末をもってその適用を終了することとなりました。(2)改正内容本経過措置における控除可能割合について、次のア~ウの期間の控除対象課税仕入れの区分に応じ、それぞれ次に定める割合となります(平成28年改正法附則53①、図表参照)。令和8年10月1日から令和10年9月30日まで・・・70%令和10年10月1日から令和12年9月30日まで・・・50%令和12年10月1日から令和13年9月30日まで・・・30%図表本経過措置の控除可能割合(3)一定の事項が記載された帳簿及び請求書等本経過措置は、「一定の事項が記載された帳簿及び請求書等」の保存が要件となります。この「一定の事項が記載された帳簿及び請求書等」とは、区分記載請求書等保存方式において仕入税額控除の要件を満たす帳簿及び請求書等(請求書等の記載事項に係る電磁的記録を含みます。)をいい、帳簿には、例えば「70%控除対象」など本経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が必要となります。3.本経過措置の適用除外(1)改正の趣旨本経過措置が租税回避等にも利用されていることを踏まえ、その防止を図る観点から、その課税期間における一の免税事業者等からの課税仕入れのうち、本経過措置の対象とできる上限額が、改正前の10億円から1億円に引き下げられます。その上で、この上限額については、取引実態等を踏まえ、今後、更なる引下げについて検討されています。(2)改正内容一の免税事業者等からの課税仕入れの合計額がその年又はその事業年度で1億円(改正前:10億円)を超える場合には、その超える部分の課税仕入れについて、控除対象課税仕入れから除かれます(平成28年改正法附則52①)。(3)改正時期上記(2)の改正は、令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用します(令和8年改正法附則90③)。4.説例による検討【設例】課税事業者である甲社(飲食業)は、免税事業者から国内にある店舗用の建物を取得し、その対価として1,100万円(うち消費税等相当額100万円)を支払いました。甲社は本則課税を適用しており、税抜経理方式で経理していますが、この場合の消費税に係る仕訳例と法人税の減価償却の取扱いはどのようになりますか。なお、当該事業年度において控除対象外消費税額等は生じません。【回答】①本則課税の場合の税抜経理方式による仕訳例(単位:万円)(注)簡易課税又は3割特例(令和8年9月30日の属する課税期間までは2割特例)を適用する場合には、消費税の納税額に影響しないため、本経過措置の適用期間中であっても、上記ア又はカの仕訳例によることもできます。②法人税の減価償却上記①の建物勘定に計上すべき金額を取得価額として、それぞれ償却限度額を計算します。提供:税経システム研究所
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2026/05/08 相続・贈与税
贈与税の重要テーマ解説3(低額譲受)
【ポイント】みなし贈与の典型は相続税法第7条に規定する「低額譲受」です。著しく低い価額で財産の譲渡を受けた場合は、財産の時価と対価の額との差額が贈与を受けたとみなされ、贈与税の課税対象となります。【解説】1売買価格土地等の売買をイメージするとわかりやすいですが、一般的に、譲り渡す側はできるだけ高く売りたい、買い取る側は、できるだけ安く買いたいと考えます。売買契約は、全く自由で、金額が折り合わなければ、次の買い手、売り手を探すだけのことです。この場合の金額とは、市場原理が働き、幅があるにせよ、バランスの取れたところで決定される額であり、時価とも言います。親子夫婦等特殊関係人間で土地建物等高額資産の売買がよくあります。売買価額を設定するにあたって、当然市場価額を調査したうえで契約しますが、現実には時価より低額で落ち着きます。親族間売買は相続税や贈与税の負担回避意識が強く働くことから、相続税法第7条の存在意義があります。他人間で、時価に比して著しく低い価額で売買があった場合、贈与の可能性は低いですが、表に現れない債権債務関係が隠れている可能性があります。売買対象物に相応の瑕疵があり、それを説明できる場合は別として、一般的には、時価から外れる金額で売買することはありません。課税庁は法人個人にかかわらず、キャピタルゲイン課税対象資産の時価の算定に膨大な費用とエネルギーを投下しています。許容される価額から外れた価額の取引が放置されることはないでしょう。2著しく低い価額の対価(1)著しく低い価額著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合、財産の譲渡があった時に、財産の譲渡を受けた者が、対価と譲渡があった時における財産の時価との差額に相当する金額を、財産を譲渡した者から贈与により取得したものとみなされます(相法7)。法律的には贈与とはいえませんが、対価と時価との差額が、実質的に贈与と同様の経済的効果が認められるためです。ここでいう「時価」と「著しく低い価額」は古くから議論の対象となっていますが、基本的に時価とは客観的交換価値のことをいいます。課税実務的には、土地等及び家屋等については、通常の取引価額に相当する金額をいい、その他の財産については相続税評価額ととらえるのが一般的です。「著しく低い価額」とは、対価に経済的合理性のないことが明らかな価額をいいます。著しく低い判定の基準は、特に定められた率や価額があるわけではありません。一般的には、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われた場合に通常成立する価額、いわゆる時価に相当する価額ですが、これも絶対的な基準はありません。著しく低い価額の対価に該当するか否かは、財産の譲受の事情、譲受の対価、譲受に係る財産の市場価額、財産の相続税評価額などを勘案して社会通念に従い判断すべきものと解するのが相当です(1983年(昭和58年)4月19日東京高裁判決)。(2)公開の市場で取得した場合公開の市場で取得した財産の価額が、著しく低い場合があります。競売で取得するケースが考えられます。このような、不特定多数の者の競争による公開の市場で取得する場合は、当事者が相手方を利することはほとんど考えられませんので、たとえ取得価額が財産と同種の財産に通常付けられるべき価額に比べて著しく低いと認められる価額であっても、課税上弊害があると認められる場合を除き、法第7条の規定を適用しないことに取り扱います(相基通7-2)。(3)譲渡した財産が2以上ある場合譲渡した財産が2以上ある場合、一つ一つの売買価格で、著しく低いかどうかを判定するのかという疑問が起きます。同時に複数の売買があった場合、譲渡物件ごとに、価格の査定をしなければならないとすると煩雑で、現実的でない作業が生じることになります。このような場合は、譲渡があった個々の財産ごとに判定するのではなく、財産の譲渡があった時ごとに譲渡があった財産を一括して判定します(相基通7-1)。この取扱いは、相続税法第8条及び第9条関係でも同様です(相基通8-4、9-14)。(4)所得税法第59条所得税法第59条第1項第2号において、法人に対して「著しく低い価額の対価」で譲渡した場合「その時の価額に相当する金額」で譲渡があったものとみなす規定があります。この場合の基準価額は所得税法第169条において「譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額」と明確に定められています。この場合の価額とは「時価」のことを言います。相続税法第7条は個人間取引を想定しています。法人が絡む場合は課税関係が異なります。低額売買の課税関係は次の通りです。取引当事者課税関係①譲受者個人時価との差額に対して贈与税課税譲渡者個人課税関係なし②譲受者法人受贈益に対して課税譲渡者個人みなし譲渡課税(5)遺言による場合財産の譲渡が遺言によりなされた場合、受贈益について遺贈により取得したものとみなされます(相法7)。3対価を伴う取引により取得した土地等の評価(1)負担付贈与通達昭和の終わりのバブルの頃に、土地等を金銭の授受を伴う売買、若しくは負担付贈与を行うにあたって、贈与税の課税標準である路線価と時価との差額に着目して、路線価より低額の売買を行い、路線価との差額分のみを贈与する事例がありました。当時、路線価は公示価格の70%程度で策定されていましたが、都市部では、実勢価格が急上昇し、時価と路線価との乖離が問題となっていました。この乖離をうまく活用したのが、低額売買若しくは負担付き贈与でした。高額な財産を、低い贈与税率で財産の移転が行われることは、課税上の弊害が大きいため、「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について(以下「負担付贈与通達」といいます。)」を公表し、一定の歯止めをかける処置がなされました。なお、上場株式および気配相場等のある株式についても同様の趣旨から、課税時期の最終取引価格によって評価する取扱いがあることに留意します(評基通169(2)、174(1)ロ)。〇負担付贈与の課税価格【原則】(2)負担付贈与通達の取扱い①相続の時は、被相続人の死という、予測されることではありますが、一般的には突然の出来事の起こった日です。贈与行為は、時価の趨勢を見図り、最も都合の良い時に、計画的に行うことができます。とりわけ、土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」といいます。)のように、価格が大きく変動する財産の移転は、時価と財産評価基準との価格の乖離の大きいときが狙い時ということになります。負担付贈与等があった場合、贈与財産の価額は、財産評価通達の規定にかかわらず、通常の取引価額で評価します。対象財産取引の区分財産の価額イ土地等(土地、土地の上に存する権利)ロ家屋等(家屋及び付属設備、構築物)・負担付贈与・個人間の対価を伴う取引取得時の通常の取引価額②贈与者又は譲渡者が取得又は新築した土地等又は家屋等に係る取得価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合、取得価額に相当する金額によって評価することができます。【土地等・建物・上場株式等】(3)対価を伴う取引の判断対価を伴う取引による土地等又は家屋等の取得が、相続税法第7条に規定する「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」又は相続税法第9条に規定する「著しく低い価額の対価で利益を受けた場合」に該当することもあり得るでしょう。この場合、個々の取引について取引の事情、取引当事者間の関係等を総合勘案し、実質的に贈与を受けたと認められる金額があるかどうかにより判定します。なお、対価の額が取引に係る土地等又は家屋等の取得価額を下回る場合、土地等又は家屋等の価額が下落したことなど合理的な理由があると認められるときを除き、「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」又は「著しく低い価額の対価で利益を受けた場合」に当たるものとされます。(4)土地の時価の判断土地の時価の算定は様々な方法があります。いくつか例を挙げます。取引事例該当地の近似する取引事例を収集して判断する方法です。これは不動産鑑定士等、地価判断を専門的に行っている者が情報収集できるため一般的ではない。公示価格該当地の近辺に公示価格がある場合、その価格を参酌して推算することができる。路線価路線価は公示価格の80%で評定されていることから、該当地の路線価を80%で割り戻せば公示価格水準の価格を算出することができる。合理的な算定方法と考えられる。なお、固定資産税評価額を70%で割り戻しても同様である。【参考判決・裁決】【裁決2012年(平成24年)8月31日】(相続税法第7条の趣旨)相続税法第7条は、「著しく低い価額の対価」で財産の譲渡を受けた場合には、法律的には贈与といえないとしても、経済的・実質的にはその対価と時価との差額について贈与を受けたものと同視できることから、この経済的実質に着目して、上記差額について贈与を受けたものとみなして贈与税を課すことで、課税の公平を図ることを目的として設けられた規定であると解される。したがって、上記のような相続税法第7条の趣旨に鑑みると、同条に規定する「著しく低い価額の対価」とは、その対価に経済的合理性がないことが明らかな場合をいうものと解され、その判定は、当該財産の価格形成に関する諸要素を勘案して、社会通念に従い、時価と当該譲渡の対価との開差が著しいか否かによって行うのが相当である。また、相続税法第7条に規定する「時価」とは、当該財産の譲渡があった時において、その財産の状況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額、すなわち、客観的な交換価値を意味するものと解するのが相当であり、これと同旨の本件個別通達の第1項本文は当審判所においても相当と認められる。(TSINSJ88-4-11)【2005年(平成17年)1月12日さいたま地裁判決】(相続税法第7条の趣旨・第三者間でも課税の対象となる)贈与税では、財産の譲受人と譲渡人との関係を問わず、贈与により財産を取得した個人が納税義務者とされており、相続税の納税義務者とは別個に規定されていることからすると、贈与税は、贈与による財産の取得が取得者の担税力を増加させることによりそれ自体を課税の対象としているものであり、贈与税が、その条文の体裁や相続税法制定経緯に鑑みて相続税の補完税としての目的の性質を有しているとしても、相続税とはその制度自体は別個のもの解すべきである。相続税法7条は著しく低い対価によって財産の取得が行われ、その担税力が増加したと認める状況があればよく、「財産の譲渡を受けた者」が相続予定者等の譲渡人と親族関係にあることを要せず、財産又は対価と時価の差額分を無償で譲り受ける意思や租税回避目的も要しないものと解すべきである。(TAINSZ255-09885)【仙台地裁判決1991年(平成3年)11月12日】(相続税法第7条の規定は第三者間の贈与でも適用できる)相続税法1条の2は、贈与税の納税義務者を相続税の納税義務者とは別個に定めており、沿革的には贈与税が相続税の補完税としての性質を有しているとしても、理論的には、贈与による財産の取得が取得者の担税力を増加させるため、それ自体として課税の対象になるというべきであり、相続税法中の贈与税の規定もこれを前提とするものである。そして、相続税法7条は、法律的にみて贈与契約によって財産を取得したのではないが、経済的にみて当該財産の取得が著しく低い対価によって行われた場合に、その対価と時価の差額については実質的には贈与があったとみ得ることから、この経済的実質に着目して、税負担の公平の見地から課税上はこれを贈与とみなす趣旨の規定であるというべきである。(TAINSZ187-6805)(下線筆者)提供:税経システム研究所
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2026/05/01 法人税税務争訟
同族会社の行為計算の否認規定の解釈適用を巡る課税の混迷とその実相(Ⅱ)~個人(株主)の同族会社に対する無利息融資は異常不合理か?~
1.令和7年3月7日裁決要旨と検討(承前)前回は、営利法人の同族会社にとって経済的合理性のあるある行為計算は否認されないという認識から疑問を提起して個人(株主)から同族会社に対する3455億円の無利息貸付の平和事件判決はもとより(注1)、本裁決のような数十億の無利息融資についても、その判断の違法性を指摘して論じたところである。そこで、最も新しい本件裁決(タインズJ138-2-03)の要旨を紹介する。<裁決要旨>(1)所得税法第157条第1項は、①同族会社等において、これを支配する株主等の所得税の負担を不当に減少させるような行為又は計算が行われやすいことに鑑み、➁税負担の公平を維持するため、株主等の所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる行為又は計算が行われた場合に、③これを正常な行為又は計算に引き直して当該株主等に係る所得税の更正又は決定を行う権限を税務署長に認めたものである。(2)本件貸付けは、23億4000万円という多額な金銭を、無利息、無期限、無担保で貸し付けるものであって、その融資条件は、独立かつ対等で相互に特殊の関係のない当事者間で通常行われる取引とは大いに異なるというべきである。(3)「所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、同族会社等の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、所得税の負担を減少させる結果となるものをいうと解するのが相当であるから、所得税法第157条第1項を適用した課税処分は適法である。2.本裁決の論理矛盾とその誤謬本裁決は、ここで指摘した問題点の大半を閑却して説示しているが、そのために、その説示の大半が論理矛盾を犯している。まず、上記(3)の説示では、所得税の不当減少について、①「同族会社等の行為又は計算で」、本件同族会社の株主から無利息融資を受けることが、➁「経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの」という論理の整合性は全く認められない。すなわち、営利法人たる同族会社が利息を支払わないで資金調達して事業資金として運用することが、何故に、不自然、不合理なもので経済的合理性を欠くという論理が意味不明であり到底理解できない。ここでの①の「同族会社の行為又は計算」とは、株主等の行為ではなく、同族会社の行為計算自体を指していることは言うまでもない。そうであれば、その同族会社が個人(株主)から無利息で借入をする行為が異常不合理でないことは当然のことであり、もはや、そのことのみでも本裁決の誤りは明らかである。この明らかな論理が裁決で否定されること自体が理解不能である。納税者は銀行の借入利率が低い銀行の融資を求めて、既存の高い利率の借入金から低い利率の銀行借入に借り換えているというのが現状である。それが個人、法人を問わずその行為を異常不合理というのが本裁決の法理である。それを異常というのであれば、本裁決の理由は不備である。何故ならば、その点に関する論理の正当性の理由が全く欠落しているからである。本裁決は、(1)で説示する「独立かつ対等で相互に特殊の関係のない当事者間で通常行われる取引とは大いに異なる」という説明は、「同族会社の無利息借入れの行為又は計算」それ自体が経済的合理性であることに鑑みれば、明らかな誤謬であることに思いを致していない。すでに同族会社の否認規定の創設でみたように、同族会社から個人株主等に対する利益移転を否認の対象とするものであり(注2)、本裁決事例のように個人(株主)から同族会社に対する利息相当額の利益移転を対象とするものではないことに留意すべきである。ところで、個人(株主)の無利息貸付の行為が不自然、不合理というのは、自然人たる個人の特性、つまり、個人は法人とは異なり、営利を追求する主体のみではないという自然人の属性にも注視すべきであるにもかかわらず、それが欠落している。本裁決は、個人はボランティアが尊敬されるという特徴につき失念している。例えば、友人関係にある個人が困窮して支援を求めてきた場合にこれに応ずる場合は、その友人のために、無償又は低額で役務(金銭、物又は労務)の提供を行うのが通常の個人としての自然な行為であるという評価が可能である。それは営利追求主体の法人とは全く異なるものであることを前提として理解しなければならない。つまり、個人が無利息融資を行うことは自然な厚意として評価されこそすれ非難されるいわれはないということである。それを否定して、個人の行為にも経済的合理性を求めるというのであれば、もはや、法人税法と同様に、所得税法に収入金額の意義、範囲を法定して対処すべきである。そうでなければ、現行の所得税法157条1項は不公平課税を生起する憲法違反の税制ということになる。本裁決の最大の疑問は、自然人と営利法人の相違という重要な事実を放擲して説示しているという点である。すなわち、自然人の特性を捨象した本裁決は、法人の行為の経済的合理性の判断基準である「独立当事者間取引基準」を個人の領域に持ち込むという明白な誤りを犯しているということを指摘しておきたい。その誤認は、所得税法157条1項の「同族会社の行為又は計算」とは、同族会社自体の行為計算をいうものであり、その株主等の関係者の行為計算ではないということを裁決は理解していない(注3)。次に、(1)において、同族会社が個人(株主)から無利息等で融資を受けた結果、「個人(株主)の所得税を不当に減少することになる」と説示しているが、個人(株主)の所得は所得税法36条の「収入すべき金額」は零であるから、利息を収受している貸付けの場合と比較すれば、租税負担が減少することはむしろ当然のことである。それを裁決が不当に減少しているという理由が何ら語られていない。もはや論外の裁決というほかはない。ちなみに、個人株主と同族会社との関係性に鑑みれば、上記(2)でいう「無利息、無期限、無担保で貸し付ける」ことの異常、不合理性を説示しているが、これを一人株主の典型的同族会社についてみれば、その株主が資金融資を行う場合、無期限、無担保であることは、むしろ当然のことである。何故ならば、一人株主の支配下にある同族会社は、「当該株主=同族会社」という一心同体の関係にあり、自らの貸付の担保は、当該株主が所有する同族会社株式により会社財産を支配管理しているから、それ自体が担保であって重ねて担保を徴することはナンセンスの極みである。何故、このような当然の道理が裁決により理解されないのか、理解不能というほかはない。ところで、当該株主の無利息融資による損失は、その行為により同族会社は利息相当額の利益を得ていることから、その純資産価額が増加しており、その純資産価値の増加は一人株主の保有する株式価値の増加とイコールであるという関係にある。すなわち、無利息貸付によって一見、当該株主に損失が生じているように見えるが、その実体は、自らが所有する株式を通じて純資産の増加という利益を享受していることになり、現実的な損失は発生していないことに帰着する。敢えて言えば、そこに無利息融資をする個人(株主)の正当な理由があるといえるであろう(注4)。しかしながら、かかる理論を述べるまでもなく、同族会社に対する無利息融資は、それ自体が株主としての支援であり、「その同族会社の行為又は計算」が、個人(株主)及び当該同族会社にとって不自然、不合理ということ自体、合理的理由はないという当然の事理として認識すれば足りるということである。3.その他の疑問点(1)法制度及び課税実務との「不平等課税」の実相所得税法59条1項のみなし譲渡の規定は、実勢価格の2分の1未満の資産の譲渡に限定して実勢価格でのみなし譲渡課税を行うこととされている。その含み益は、株主が完全に支配管理しているにもかかわらず、半分の猶予枠を認めているのであるから、無利息貸付の利息認定にはその猶予額が零というアンバランスは説明不能である。個人株主が所有する土地に同族会社が借地権を無償で設定(無償返還の届出)した場合には、権利金、相当地代の認定課税はなく課税関係は発生しないという定着している課税当局の課税実務との齟齬の説明も不可能である。過大管理料の所得税法157条1項による否認は後述するが、無利息融資等の本件の利息収入は、それが個人間又は個人(株主)と非同族会社との間で同様の融資が行われた場合には、現行法の下では否認できないという不平等課税が生ずることについて、裁決は考慮の埒外においている。かかる課税関係の相違の下での本件利息収入の認定課税は、不平等課税そのものであるにもかかわらず、その真摯な検討も看過している本裁決は、明らかに誤謬というべきである。(2)適正利率について本裁決は、本件無利息融資の適正利率は銀行借入の利率によるべきであるとしているが、営利を追求する法人とは異なり、個人(株主)の場合には金融業を行っている個人であればともかく、一般には余剰金は定期預金として運用されているから、敢えて個人(株主)に利息の認定課税を行う場合には、その失われた収益は定期預金利息であるから、適正利率は定期預金利率によることが妥当であると考えられる。(3)過大経費の否認の法理と本裁決の対応的調整過大管理料の否認は実質主義による認定によるべきこと過大管理料等の過大経費の否認は、同族会社の行為計算の否認規定によるのではなく、「事実認定の実質主義」により株主の法人に対する贈与として否認すべきであり、対応的調整は不要である。しかしながら、裁決等は古くから所得税法157条1項を適用して過大部分の必要経費性を否認しているが、それは誤りというべきである。この「事実認定の実質主義」による否認によれば、株主対非同族会社、個人対個人の過大管理料の支払いも同様に否認できるが、所得税法157条1項による否認の場合は、支払の相手方が非同族会社又は個人であれば否認できないという不合理・不公平な事態が生ずる。そこで、課税庁に厳格な立証責任を求めて、過大管理料の過大部分は贈与として必要経費性を否認する統一した整合性ある課税処分及び裁決が行われるべきである。このことは、筆者は古くから指摘しているが、課税当局、国税不服審判所は立証責任の緩和的対応として機能している同族会社の行為計算の否認規定により、便宜的に否認している。真に遺憾という以外言葉もない。ちなみに、この点に関して指摘しておきたいことがある。それは、最近では、過大経費(賃借料)の支払いを法人税法132条(同族会社等の行為計算の否認)1項を適用して、過大賃借料の過大部分の全額を損金不算入とする更正を行い判決でもこれを認めている(名古屋地裁平成11年5月17日判決(税資242号602頁)。しかし、上記の通り、実質主義により過大部分は贈与と認定して寄附金課税として処理すれば、事案によっては、その金額が寄附金の損金算入限度額以下であれば更正されないことになる。一方で、同族会社行為計算の否認では過大支出額の全額が損金不算入とされるという不公平課税(憲法違反)が生ずる。この矛盾した課税は、実質主義又は法解釈による否認等の一般的否認規定が優先され、同族会社の行為計算の否認規定のように特別に与えられた課税権の行使は最後の否認手段として位置付けるべきということである。同族会社の行為計算の否認規定が「伝家の宝刀」たる所以はここにある。本裁決による無利息融資の利息認定と同族会社に対する対応的調整次に、本件のように個人(株主)の同族会社に対する無利息融資につき、所157条1項を適用して利息収入の認定課税を行なうのであれば、同条の規定が、正常な行為計算による課税関係を形成するものである以上、同族会社においては適正利率の利息を支払ったとフィクションして同額の認定利息を同族会社の所得金額の計算上損金の額に算入することにより、個人(株主)及び同族会社が正常な取引による課税関係を達成するという租税回避行為の否認の本来の目的が実現されるということである。そのためには、個人に認定された利息相当額を同族会社の所得金額の計算上損金の額に算入する対応的調整が不可欠であるということである。そうでなければ、株主個人が収受していない利息を収入したものとフィクションして雑所得課税が行われ、他方で、本件同族会社は何らの対応的調整がなされないということは、真に、個人株主の雑所得課税と法人税の二重課税を納税者に課するということである。それが許されないことは、租税回避行為の否認の法理を理解している者にとって当然のことである。少なくとも、本件同族会社にとって、対応的調整は不可欠であり、加えて、これだけ多くの問題点を含んでいる規定、それを通達による何らの示達もしないまま放置している課税当局の対応に鑑みれば、納税者の申告に正当理由を認めて、過少申告加算税を課さないことが公正な税務対応であるというべきである。4.結びに代えて本裁決の他に、本件の前年に2件の裁決事例があるが、それは本事例と同様の否認の法理により利息の認定課税が行われている。それは、平和事件の原審判決及び最高裁判決の影響を受けたことは明らかであり、したがって、ここで論じた裁決批判は平和事件判決のすべてに該当する問題点であり批判である(注5)。すなわち、ここでの批判の要点は、平和事件の原審判決及び最高裁判決は、全く検討の対象とはしていないし、原審判決により取り消された過少申告加算税の賦課決定処分は、最高裁判決により取り消され復活している。そうであれば、平和事件の原審判決及び最高裁における審理内容からすれば、両判決は、ここで指摘した論点の問題点の認識は殆ど念頭にはなかったということができるであろう。それがそもそもの問題であるが、最高裁判決後、ここで紹介した裁決が行われるまでの間の23年間(一審判決後30年間)の長きに亘り、同種の利息認定の課税は行われていないようにも思われる。それは、国税庁が、この判決後にあまり積極的には課税しないようにとの会議で伝えられたということを仄聞しているが、真偽は不明であるものの、長きに亘り、同種の事件が発生していなかったことは、その判決事例の問題性を考えれば、このような事実があったことと符合するようにも思われる。他方で、修正申告では、問題点を理解していない某国税局より10億円に満たない融資につき、修正申告を慫慂されて課税された事例も仄聞している。そのことは、いわゆる税務執行の不平等課税という憲法違反の税務執行の課税が行なわれているということである。今回の裁決事例も多額であるといえばそうであろうが、そこで、10億円又は5億円さらに1億円はどうか、様々な不合理、不公正そして不平等が現実の問題として派生することになろう。課税当局及び不当性も審理の対象となる国税不服審判所におかれては、慎重な検討が期待される。(了)<注釈>平和事件判決については、拙稿・税務事例32巻5号(2000年)1頁、同巻6号1頁、同巻7号1頁及び租税訴訟No13号69頁参照。その他同族会社の行為計算の否認規定を広く論じたものとして租税回避行為研究特別委員会(税務会計研究学会)最終報告(委員長大淵博義・委員岸田貞夫・野田秀三)「租税回避行為-その否認の現状の問題点と課題-」税務会計研究第20号165頁~194頁(平成21年)を参照。例えば、株式の譲渡所得非課税の時代における株主からの株式の高価買取によりその全額を非課税とする行為がこれに該当する。しかしそれとても、事実認定の実質主義により過大支出は否認できるから、もはや所得税法157条1項の適用の余地はない。なお、裁決は株主の同族会社に対する過大管理料の支払いを所得税法157条1項により否認しているが、その管理が個人又は非同族会社が行い同額の過大管理料を支払っている場合は、否認しないのであろうか。その場合は、事実認定の実質主義により過大部分を証明して否認することは当然のことである。裁決はかかる問題点にも気づいていないのであれば、国税不服審判所長には猛省を促したい。このことを強調して指摘するものに、田中治「所得税における同族会社の行為計算の否認規定」(財)日本税務研究センター編『同族会社の行為計算の否認規定の再検討』(財)日本税務研究センター(2007年)81頁。同『第58回租税研究大会記録』(社)日本租税研究協会(2007年)131~132頁参照。また、碓井教授は、所得税法も法人税法も「同族会社の行為計算で」とされていることから、「同族会社の行為計算の否認の規定が『同族会社』という主体に着目して定められている」と解されるとされ、その上で、「同族会社自体の意思決定が介在する余地のない場合、又は、同族会社自体の意思決定としては合理的であるという場合には、否認できないと結論づけることが可能となる。」碓井光明「相続税法64条1項にいう『同族会社の行為』の意義等」判例評論280号(判例時報1037号)159頁)。なお、大淵博義「『所得なきところに課税なし』の原則と同族会社の『行為・計算』の否認」税理40巻9号(1997年)63頁以下も参照。このことは、米国親会社が日本子会社の従業員等にストックオプションを付与し、その従業員等が得た行使益は、親会社からその従業員等に対する給与所得とした判決を参照すれば、容易に理解できるであろう。平和事件判決の批判的検討については前記「1」の注を参照。提供:税経システム研究所
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2026/04/28 所得税医療業務
使用者からの食事の支給により受ける経済的利益についての所得税基本通達における取り扱い
1.初めに令和8年度税制改正大綱において、所得税が非課税とされる食事の支給にかかる使用者の負担額の上限が現行の月額3,500円から7,500円に引き上げられることになりました。実に42年ぶりの改正ということになります。この所得税が非課税とされる(経済的利益はないものとされる)取り扱いは所得税基本通達36-38の2に示されていますが、給食費についての取り扱いを、金額を当てはめながら整理してみたいと思います。2.改正前の所得税基本通達36-38の2の規定使用者が役員又は使用人に対して支給した食事(36-24の食事を除く。)につき当該役員又は使用人から実際に徴収している対価の額が、36-38により評価した当該食事の価額の50%相当額以上である場合には、当該役員又は使用人が食事の支給により受ける経済的利益はないものとする。ただし、当該食事の価額からその実際に徴収している対価の額を控除した残額が月額3,500円を超えるときは、この限りでない。(昭50直法6-4、直所3-8追加、昭59直法6-4、直所3-7改正)(36-24の食事を除く)とは、残業又は宿日直をした者に支給する食事のことをいいます。これは所得税基本通達36-24に次のように記載されています。使用者が、残業又は宿直若しくは日直をした者(その者の通常の勤務時間外における勤務としてこれらの勤務を行った者に限る。)に対し、これらの勤務をすることにより支給する食事については、課税しなくて差し支えない。(昭50直法6-4、直所3-8改正)36-38により評価した食事の価額とは、所得税基本通達36-38に次のように記載されています。使用者が役員又は使用人に対し支給する食事については、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に掲げる金額により評価する。(昭50直法6-4、直所3-8改正)使用者が調理して支給する食事その食事の材料等に要する直接費の額に相当する金額使用者が購入して支給する食事その食事の購入価額に相当する金額3.消費税の取り扱い使用者の負担額(食事の価額から徴収した金額を控除した残額)が限度額を超えるかどうかは、消費税(地方消費税含む)の額を除いた金額により判定することとされています(平元直法6-1「消費税法等の施行に伴う源泉所得税の取り扱いについて」(平26課法9-1改正))4.改正後の使用者の負担額の限度額の計算例設例1:①仕出し弁当による一カ月の金額(702円×22日)15,444円消費税8%込みの金額②職員からの徴収金額7,722円50%相当額③使用者負担額①-②=7,722円④③÷1.08=7,150円<限度額7,500円∴非課税扱い理由職員の負担が50%以上であり、かつ使用者負担額が7,500円を超えていない。設例2:①ケータリングで社内調理による一カ月の金額(770円×22日)16,940円消費税10%込みの金額②職員からの徴収金額8,470円50%相当額③使用者負担額①-②=8,470円④③÷1.1=7,7000円>限度額7,500円∴課税扱い理由職員の負担は50%以上であるが、使用者負担額が7,500円を超えている。この場合注意すべきは、7,700円が給与課税となることです(限度額を超えた分ということではありません。)非課税とするには、職員からの徴収額を50%相当額の8,470円ではなく8,690円にしなくてはなりません。5.現物支給の範囲食事の支給に代えて現金支給にすると要件を満たさないことになりますが、例えば食事チケットや食事カードなどは現物支給とされています。6.深夜勤務者への食事支給に代えて現金支給する場合の限度額の改正深夜勤務者には夜食の支給ができないために、食事を支給するのではなく現金で食事代の補助をする場合には、1食当たり650円(改正前は300円)以下の支給額であれば課税されません(消費税及び地方消費税を除いた金額です)。超える場合には補助した全額が給与として課税されます。なお、現金支給ではなく、残業または宿日直を行うときに支給する食事については、上述した所得税基本通達36-24によって、食事代を徴収しなくても給与として課税しなくて差し支えないことになっています。提供:税経システム研究所
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2026/04/22 経営・運営公益法人
新公益法人制度と会計(第7回)
新公益法人制度と会計について、前回は新法と旧法の算定方法について記載させて頂きました。第7回では、引き続き中期的収支均衡の過去の剰余金・欠損額との通算等の内容について解説させて頂きます。中期的収支均衡を図るべき期間は5年間となり、発生から5年間を超える残存剰余額がなければ、当該中期的収支均衡が図られていることになります(新認定法規則15、21)。【通常の算定方法の例】ア.【当該事業年度の収支の算定】収入額100≧費用額80の場合年度剰余額20=収入額100-費用額80収入額100≦費用額110の場合年度欠損額10=費用額110-収入額100※10を0とすることができます(新認定法規則16②但書)。≪収入額と費用額の構成≫注1経常収益及び経常費用は、一般純資産に係るものに限ります。また、費用額について、公益目的充実資金の取崩し又は剰余金の解消策により取得した公益目的保有財産に係る減価償却費の額を除きます。注2公益充実資金の取崩額は、公益目的保有財産の取得・改良に充てた額を除きます。注3収益事業等の利益は、管理費のうち収益事業等に按分されるものを除きます。また、収益事業等を行う公益法人に限ります。イ.【過去の剰余額5年・欠損額4年の通算】当該事業年度に年度剰余額が生じた場合A過年度残存欠損額がない(通算する過去の赤字がない)場合暫定残存剰余額=年度剰余額B過年度残存欠損額1000≧年度剰余額500の場合暫定残存剰余額0=年度剰余額500-過年度残存欠損額1000(残損500)※残損は法令用語ではありません。C過年度残存欠損額1000<年度剰余額1200の場合暫定残存剰余額200=年度剰余額1200-過年度残存欠損額1000当該事業年度に年度欠損額が生じた場合A過年度残存剰余額がない(解消する過去の黒字がない)場合残存欠損額=年度欠損額B過年度残存剰余額1000≧年度欠損額500の場合残存欠損額0=年度欠損額500-過年度残存剰余額1000(残益500)※残益は法令用語ではありません。C過年度残存剰余額1000<年度欠損額1200の場合残存欠損額200=年度欠損額1200-過年度残存剰余額1000ウ.【剰余額の解消策】公益目的保有財産の取得又は改良一定の場合の借入に係る元本返済令和2年度及び令和3年度新型コロナウイルス感染症の感染拡大に係るものその他行政庁の確認を得た支出エ.【残存剰余額等の算定】年度欠損額及び解消額の控除については、過年度残存剰余額のうち発生年度の古いものから過年度残存剰余額を上限に順に控除することになります。次回も引き続き、中期的均衡についてご説明させて頂きます。提供:税経システム研究所
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2026/04/15 法人税
知っていて損はない適格要件が2つの組織再編手法~適格現物分配とその活用例~
私は昨年、組織再編手法の中の「会社分割」を使った事業承継の解説を2回行いました。今回は、組織再編シリーズ3弾目として、適格要件が2つしかない「現物分配」を取り上げることにします。組織再編制度を大企業向けの制度とか、自社等には関係ない制度とは思わずに、この制度を少しでも理解していただけるよう、前回までと同様に制度の概要と具体的な活用例を簡潔に解説してみたいと思います。1制度の概要等(1)現物分配の意義等現物分配とは、法人がその株主等に対し、剰余金の配当等や解散による残余財産の分配等の事由により、金銭以外の資産の交付をすることをいい(法人税法2条12号の5の2)、現物分配により有する資産の移転を行った法人を現物分配法人(同条号)、現物分配により現物分配法人から資産の移転を受けた法人を被現物分配法人といいます(法人税法2条12号の5の3)。(2)適格要件帳簿価額(簿価)での移転が可能となる適格現物分配とは、①内国法人を現物分配法人とする現物分配であり、②その現物分配により資産の移転を受ける者がその現物分配の直前において当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)のみであるものです(法人税法2条12号の15)。したがって、要件はこの2つのみで、組織再編後においても、当事者間の完全支配関係の継続を求める「完全支配関係継続要件」等といった要件は課されていません。(3)適格現物分配の課税関係イ現物分配法人適格現物分配を行った場合、剰余金の配当として、株主等に交付する資産のその適格現物分配の直前の帳簿価額の合計額(注1)を、利益積立金額から減算(法人税法施行令9条8号)するとともに、適格現物分配により移転をした資産のその適格現物分配の直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして、その内国法人の各事業年度の所得の金額を計算することになります(法人税法62条の5第3項)。源泉徴収については、所得税法第24条に規定する配当等とされています(所得税法174条1項2号、212条3項)が、適格現物分配が同条の配当等の範囲から除かれています(同法24条1項)(注2)ので行う必要はありません。仮に、移転する資産の帳簿価額を150万円とすると次のような仕訳となります。(借方)(貸方)(利益積立金額)150万円(資産)150万円ロ被現物分配法人適格現物分配の場合、被現物分配法人が受け取る配当等について、受取配当等の益金不算入の対象から除かれていますが(法人税法23条1項)、別途、内国法人が適格現物分配により資産の交付を受けたことにより生ずる収益の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金不算入とされ(法人税法62条の5第4項)、交付を受けた資産の現物分配直前の帳簿価額相当額が利益積立金額に加算とされます(法人税法施行令9条4号)。また、適格現物分配により、資産の移転を受けた場合には、その移転を受けた資産の適格現物分配の直前の帳簿価額による譲渡を受けたものとされます(法人税法施行令123条の6第1項)。仮に、移転を受けた資産の帳簿価額を150万円とすると次のような仕訳になります。(借方)(貸方)(資産)150万円(利益積立金額)150万円2活用例(1)事例の概要A社は、持株会社であり、その運営費はA社が完全支配する内国法人B社からの配当で賄っています。そのため、A社には、税務上、毎期運営費相当の欠損金が生じ、繰越欠損金が使用されないままとなっています。今般、A社はこの繰越欠損金が期限切れを迎えることから、その対応を考えていますが、経営方針として子会社等との合併は考えていません。なお、B社には含み益のある資産があります。(2)検討イ完全子法人からの現物分配の検討現物分配には、前述のとおり、法人がその株主等に対し剰余金の配当等により金銭以外の資産の交付をすることが含まれています。したがって、現物分配法人が含み益のある資産を現物配当することも該当することになり、前述した2つの要件を満たすことで、帳簿価額での移転が可能となります。この事例の場合、現物分配を行うB社は内国法人であり、現物分配の直前における被現物分配法人であるA社とB社との間に完全支配関係があることから、適格現物分配に該当することになります。ロ現物分配後に被現物分配法人が現物分配で取得した資産を譲渡した場合現物分配後に被現物分配法人が現物分配資産を譲渡した場合には、基本的に被現物分配法人において譲渡損益が生じることになります。しかし、被現物分配法人が現物分配資産を譲渡しても適格要件には影響はありません。したがって、本事例の場合、A社が適格現物分配で取得した資産をその後に譲渡したとしても、現物分配自体が非適格現物分配(時価での譲渡)としてB社に譲渡損益が生じることはありません。なお、A社においては、適格現物分配で取得した資産の譲渡による譲渡益が生じることになりますが、繰越欠損金を有するのであれば、繰越控除できることになります。<注釈>剰余金の配当が資本剰余金を原資とするなど、みなし配当事由に該当する場合には、みなし配当の額とされる部分の金額従前は、100%のグループ関係にある完全子法人から親法人が受ける配当については、その支払い時に源泉徴収が行われ、その源泉徴収された所得税額等は、親法人の確定申告において税額控除される仕組みになっていました。一方で、完全子法人から受ける配当については、親法人の法人税の算定にあたり、全額を益金不算入とすることが認められており、法人税が課されないにもかかわらず源泉徴収の対象とされることについて、会計検査院から効率性、有効性等を高める検討を行うべきとの指摘があり、令和4年改正で源泉徴収を行わない改正がされ、令和5年10月1日以後に支払いを受けるべき配当について適用されました。提供:税経システム研究所
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